【MFA健康コラムVol.70】幸福を科学する その3
さて、前回の続きで今回のテーマも「幸福」である。
大きな時代の転換期に居るようなこの2〜3年であるが、自分ができることで、自身の幸福度をある程度コントロールできるとしたらどうだろう?
各種データを用いながら、日常に取り込めるような簡便な方法を紹介する。
【つながりと幸福度。その副産物】
人生の様々なステージにおいてどのような幸福度となるのか、同一人物を追跡調査することで見えてくるものがある。
この種の前例のない追跡調査を「長期」にわたって行ったアメリカのハーバード成人発達研究のGrant General Questionnaire は、1938年から2014年までという、実に77年にわたって同一個人に対して行われた追跡調査である。2年ごとに生活全般にわたるアンケートを実施し、5〜10年ごとの面接に加え、5年ごとに医学的な健康状態を把握していった。
このおよそ80年にわたる調査の結論として示されたのは、人との関係性やその結果としての幸福度は「我々の健康に強い影響」を及ぼすということであった。
調査のディレクターである精神科医 ロバートはこの結論について、「人との関係性に気を配ることは、自分自身のケアにもつながる。このことは調査から明らかになった新事実である。」と述べている。
人とのつながりは健康を向上させることに寄与し、さらには健康を介さずとも直接的に幸福感を高めることにつながる。これは、前回の記事でもお伝えした内容の通りであり、自分以外の他人(人やモノ)に興味を持つことで、そこから幸福感を得られるのだ。
健康が、自分自身のためにそうなるという「目的」から、自分以外の他人と関わることを目的とすることで、そのために健康になるという「手段」になる。そうした結果、さらに幸福感を得られるのだとしたら、人に興味を持ち、時間をかけて関係性を構築すること、そしてそれには自らの健康が重要になる、と言える。
時間をかけて実証済みのこの研究、軽視はできないかもしれない。
【同じく長期研究が明らかにした幸せになる人の共通点】
人から「嫌われる」ことを、皆さんは良しとするだろうか?
これを明らかにしたのが、75年という長期にわたって「人の幸福度に影響を与える要素」について研究した「ハーバードメン研究」である。ハーバード大学に在学していた268名を対象として、卒業後も追跡調査を実施し、2009年にその結果が発表された。
その結果は「研究対象のトップ10%の「幸せな人生を歩んだ人たち」は、人生の中で「温かな人間関係」を築くことができていた」という事実だ。
トップ10%の人々は、温かな人間関係を築くことができなかった人たちと比較して、年収が高く、専門的な分野で成功を収めた人も3倍多かったとされている。幸福度と仕事での成功にもっとも影響を与える要因は何かというと、「温かな人間関係」を築くことができたかどうか、だったのである。
では、温かな人間関係を構築する方法には何があるだろうか?
先述したハーバードメン研究の指揮をとっているハーバード大学医学部教授のジョージ・ヴァイラントは、温かな人間関係を構築するために必要なのは「人を愛する力」だと述べている。
この「人を愛する力」というのは科学的に判明しており、脳のアルギニンバソプレッシン(AVP)受容体の濃度が影響していると言われている。ただ、このAVPは生まれながらにして決まっているため、自ら増やそうと思っても無理があるのである。
では、「人を愛する力」を強化するためには、どうすれば良いのだろうか?
次回はその方法について、紹介したいと思う。
参考書籍
「99.9%は幸せの素人」 星 渉 / 前野 隆司
「科学的に幸福度を高める50の習慣」 島井 哲志
「幸福の測定 ウェルビーイングを理解する」 鶴見 哲也 / 藤井 秀道 / 馬奈木 俊介