【MFA健康コラムVol.72】緩みと緊張のバランス その1
この記事をお読みになっている方の中にも、年末に向けて色々と忙しくされている方が多いのではないだろうか。
今年一年の振り返り、そして来年に向けての取り組みを考える中で、自然と「ストレス」を感じる方も少なくないだろう。
スイッチが入りやすい時期だからこそ、立ち止まって「落ち着く」時間を確保してみてはいかがだろうか。
【人間に備わった自律的なシステム】
交感神経と副交感神経というシステムが人間にはある。
聞いたことがある言葉ではないだろうか。
人間の脳が担っているシステムで、基本的には「自律的」に私たちの行動を整えてくれるものだ。
このシステムを自律神経と呼ぶ。
自律神経は大きく2つの分かれる。1つが交感神経、そしてもう一つが副交感神経である。
この2つ、交感神経と副交感神経はルートが違えど、脳や脊髄といった中枢神経から全身の臓器や器官などに伸びて作用する。それぞれが違うルートで同じところに作用しあっているのは、それぞれが拮抗的な役割を担っているからである。
一般的に交感神経はfight or flightの神経系といわれる。すなわちfight(闘争)またはflight(逃走)のための神経系ということである。
戦ったり逃げたりすることは、生存確率を高める上で重要だ。それを自分の意識とは関係ないレベルで自律的に神経系が統制してくれているのである。
心臓へ作用して拍動を活発化させ、全身に血液を巡らせ、エネルギー源であるグルコースなどを全身へ届けやすくしたり、膀胱を収縮しておしっこを出づらいようにしたりするのである。戦ったり逃げたりしている時に排尿をしている余裕はないことを考えればイメージが湧くだろう。
副交感神経はrest or digestの神経系といわれる。すなわちrest(休息)またはdigest(消化活動)を促す際に優位に働く。
副交感神経は私たちがエネルギーを蓄えるために重要な神経系といえるだろう。そしてこの副交感神経があるからこそ「よし、やるぞ」とやる気スイッチが入って交感神経がうまく活動してくれるのである。
この2つの神経系、副交感神経と交感神経のバランスを崩すことを自律神経失調症という。
私たちがストレスを多大に受けると、交感神経が優位になってくる。だからこそ、意識的に副交感神経を働かせることで、交感神経の活動を和らげることができるようになるのだ。
これからの年末年始の忙しい時期に、まずは下記の方法で副交感神経を働かせてみてはいかがだろうか。
【簡単にできる副交感神経を働かせる方法】
自律的な神経とはいえ、コントロールが全くできないわけではない。
副交感神経を働かせる方法として、以下があげられる。
①「呼吸」
まずは昔から言われる呼吸である。
呼吸を整えるだけでも落ち着く、ということを経験している方もいるだろう。
ここでいう呼吸は深呼吸ではない。神経科学の観点から補足すると、リズムをもって、吸うのを短めに、吐くのを長めにする呼吸である。
リズム制のある動作に人はセロトニンを分泌するし、吸っている時は交感神経、息を吐いている時は副交感神経が優位になりやすいからである。
心地よく息を吸ったら、ゆったりと苦しくない程度まで息を吐く。
たとえ1分程度でも呼吸に集中するだけでだいぶ落ち着くはずである。
②「食事」
食事の時間を楽しむこと。
食事はいつも摂っているし、気軽にできることであろう。
では、食事中に仕事やプライベートなことを含め、何か考え事をしながら食べていることはないだろうか?または、携帯の画面を見ながら食事をしていることもないだろうか?
その考え事や携帯を触りながらの行為が、もしかしたら副交感神経優位の邪魔をしているかもしれない。
食事の頻度は人によるだろうが、食事を摂っている時間は、食事に集中して、リラックスモードをオンにしてみてはどうだろうか。
忙しい時期だからこそ、意識的に副交感神経を優位にする行動を心がけたいものである。
次回は、どうストレスに向き合うか?についてお話したい。
参考書籍
「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」 ケリー・マクゴニガル
「HAPPY STRESS」 青砥 瑞人