【MFA健康コラムVol.106】歩くことの”心理”と”スピード” その2
今回は歩行の性質が気分にどのような影響をもたらすのか、実際に歩く際に意識することについて、お話をする。
【内向き=ネガティブ?】
鈴木晶夫、佐々木康成、弓場靖子のグループは、歩行の性質が気分にどのような影響をもたらすのかを調べた。
日常外股で歩いているという人と、内股で歩いているという人について、歩いた時の気分を回答してもたったところ、外股歩きの人の方が内股歩きの人より、ややポジティブな気分であったが、それほど大きな差はなかったようだ。
しかし、外股で歩いている人に内股で歩いてもらったところ、外股の時に感じた気分よりもネガティブな気分に変化した。
この結果から、内股歩きは元来ネガティブな気分と関係があるかもしれないと示唆できる。
推測であるが、怪我や何かが起因となり内股気味(いつも通りではない変化)になることは、慢性的な痛みや違和感だけではなく、心の部分にもネガティブに影響してくるかもしれない、ということである。
【まずはいつもより”速く”歩いてみる】
では実際に、歩く時にはどのようなことを意識すれば良いだろうか?
今回ご紹介するのは歩くスピード。
人によってそのスピードはまちまちであるが、今より少し速く歩くことを意識してみよう。
また健康面から考えても、速く歩ける人の方が死亡率が低いというデータまである。
厚生労働省から「それぞれの年齢でこれぐらいのスピードでは歩きたい」という目標数値も出ているので、ぜひ一度トライして頂きたい。
1分で何m歩けるのか
20歳代 男性125m 女性115m
30歳代 男性120m 女性115m
40歳代 男性120m 女性110m
50歳代 男性115m 女性105m
60歳代 男性115m 女性100m
陸上のトラックなどを歩ければ正確であるが、その環境下にない方も多いだろう。
比較的大きな公園で、ランニングコースなど1周の距離が明記されている所で、参考程度にご自身の”速さ”を確認してみてはいかがだろうか。もちろん、普段の日常において意識的にスピードを上げてみることも効果的だろう。
いろいろな情報が錯綜する昨今であるが、まずは出来ることから少しずつ実践していくことが好ましい。
ウォーキングは必要とする心肺機能、筋肉などが高くなくても少なくても始められる運動の一つである。
行動を起こすことで生まれるウォーキングについての疑問や考えも、ぜひ、大切にして欲しい。
参考文献
春木 豊「動きが心をつくるー身体心理学への招待」講談社,2011
園原 健弘「あらゆる不調が解決する 最高の歩き方」PHP研究所,2017
メディカル・フィットネス協会「ウォーキングトレーナー養成講習会テキスト」2024