【MFA健康コラムVol.104】疲労の正体と対処法 その2
前回は疲労の正体についてお話した。
今回はその疲労への対処法について、お話したい。
【疲れが溜まったら”活力”を】
1日の中で職場や学校に行き、仕事や勉強などの活動をする。その活動を通じて、当然のごとく疲れる。そして、疲れたら休む。
この活動→疲労→休養のサイクルの結果が、日本人の約8割が疲れているという数字を表しているとしたら、どのようにすればその疲労に対処できるだろうか?
辞書で”疲労”を調べると、その対義語は”活力”と出てくる。
休養だけでは回復しなかった疲労には、その休養の前に”活力”が高まるような行いをしてみる。
要は、”あえて自分に何かしらの負荷をかける”のである。
疲れている時に負荷をかけることに否定的な意見があるのは承知の上であるが、イメージして欲しい。体が疲れているときほど、しっかりと熟睡(休養)できた記憶はないだろうか?
もちろん、次の日に疲れが更に残ってしまうくらいの負荷はおすすめできない。
しかし適度な負荷をかける”活力”を高める行為を日常に取り入れることで、少しずつ基礎体力もついてきて、なんとなく疲労が溜まっていた日常の中に、快活さ快適さが生まれてくるかもしれない。
無理は禁物であるが、テレビを見ながら、歯を磨きながらスクワットをするなどの「ながら筋トレ」や、エスカレーターではなく階段を使ったり、一駅分を歩いてみたり、日々の中で実践できることからはじめてみると良いだろう。
【浪費家の脳へのご褒美】
最後に、脳の疲労への対処法である。
脳の回路の中にデフォルト・モード・ネットワークというものがある。
これは意識的な活動をしていない時に働く脳のベースライン活動をしている。いわば脳のアイドリング状態を担っている部位であり、脳内のさまざまな神経活動を同調させる働きがある。つまり急に動き出すために必要な最低限の機能を維持している。
またアイドリングに似た機能だけではなく、外部から入ってきた情報を取捨選択する役割も果たしている。そのためデフォルト・モード・ネットワークがしっかり働いていると、整理された情報が結びつきやすくなり、これまでにないようなアイデアも生まれやすくなる。
この回路は脳のエネルギーの実に60〜80%を占めるとも言われており、脳の中においての浪費家的な位置付けとも言えよう。逆に何か意識的な作業をするにしても追加で必要になるエネルギーは5%ほどのようである。
脳を休めてデフォルト・モード・ネットワークでエネルギーを浪費しない為には、マインドフルネス呼吸が有効的だ。
方法はリラックスした姿勢で、呼吸に意識を向ける。
鼻を通る空気を感じ、吐くときも同じように。
呼吸の深さや、お腹の動きなど、自分自身にフォーカスしていく。
途中で、何か他のことを考えて雑念が生まれたら、その状態に”気付き”、再び自分にフォーカスしていくのである。
1日5分でも良い。可能であれば同じ場所、同じ時間に取り組んでみて欲しい。
疲労の原因となるストレスは、実に様々である。
Aさんに合う対処法もBさんには合わないこともあり得るわけだ。
自身の身の回りのストレッサーを感知しつつ、自身の状態もメタ認知を駆使してモニターしていただきたい。
マイナス要素を探求しているつもりが、きっと、自分自身にとって快適な状態や、なんとなく心地よい感覚を得られるヒントがあるはずだ。
また、自分で出来ることと、専門家に委ねることで得られることもある。
”こんな違和感で専門家に相談して良いのかな?”と思いながらも行動した結果、疲労との正しい付き合い方を知るキッカケに繋がっていけば幸いである。
参考文献
久賀谷 亮「世界のエリートがやっている最高の休息法「脳科学×瞑想」で集中力が高まる」ダイヤモンド社,2016
片野 秀樹「休養学:あなたを疲れから救う」東洋経済新報社,2024