【MFA健康コラムVol.102】休むことの価値 その2
前回は「高速道路効果」と、疲れている人の割合についてお話した。
今回は休むことの罪悪感と疲れ方について、お話をする。
【休むことの罪悪感】
OECDが2021年に国別の平均睡眠時間を調べたデータがある。
それによると、OECD加盟国の平均睡眠時間は508分(8時間28分)。日本は残念ながら442分(7時間22分)で、加盟国中最下位であった。
また、同じく労働時間についてもOECD加盟国を対象としたデータがあるが、長い労働時間のイメージがある日本は年間で1607時間と、実は世界の平均である1752時間より少ないのである。その時間、OECDの加盟国平均よりも145時間少ないことになる。(日本:赤グラフ 平均:青グラフ)
”休みがない”という印象がある日本であるが、意外と休んでいるのだ。
では、その空いた時間で日本人は何をしているのだろうか?
別のデータでは「プライベートな時間が増えたら何をしたいですか?」という問いに、日本人は「休息・睡眠」という答えが1位となっている。
一方で世界的に見ても睡眠時間が短く、労働時間も長い韓国の人たちの1位は「運動・スポーツ」であり、他にも「家族と過ごす」「恋人・友人と過ごす」が上位となっている。
日本人は疲れている人が多い中で、プライベートな時間が増えれば「家でゆっくり休息して寝ること」という選択が休み方のメインとなっている人が多い。”仕事を休むこと=ゆっくりすることやだらだらすること”、と思われるのが嫌で、結果的に”疲れているので休みます”と言いづらい環境があるのかもしれない。
ではもし逆に、日本人が休むことでプラスの効果が生まれると知れば、どうなるだろうか?
ただ単に、日本人が休み方と、休むべき状態やタイミングを把握できていないだけだとしたら、本当に疲労を感じてから休む前に、何か手立てを打つことができるかもしれない。
それがこの先、慢性疲労の人の減少に伴う経済損失の回復だけではなく、幸福度なども上がってくる要因になり得るとしたら、”休むことの価値”は軽視できない事になる。
【昔とは違う疲れ方】
また、疲労に直結するであろう働き方についても、時代と共に大きく変わってきた。
昭和が肉体労働の時代であったとすれば、令和は頭脳労働の時代。コロナ禍をきっかけに普及したテレワークやオンラインサービスも拍車をかける要因となったであろう。
1日中体を酷使する昭和からの労働スタイルから、今は頭(脳)への負荷が大きい時代である。その中にいながら、帰宅途中や家に帰ればSNSやネット配信を観て、更に脳に刺激を与える。
1日を通して頭は興奮・緊張状態を強いられ、その結果、睡眠の時間や質にまで影響を及ぼしてしまう。座ったままできる仕事が増えて体は楽になった一方で、体はあまり疲れていないのに頭だけが疲れている。その結果、肉体にも疲れが残るようになっているのである。
皆さんは”疲れ”に対してどのように認識しているだろうか?
痛みや違和感、しんどさの閾値は人によって異なる。もし、自身の感覚より少し前に疲労に気づけるサインがあるとしたらどうだろう。
一つのきっかけになれるよう、次回はその疲労の正体と、具体的な休み方についてお届けすることとする。
参考文献
久賀谷 亮「世界のエリートがやっている最高の休息法「脳科学×瞑想」で集中力が高まる」ダイヤモンド社,2016
片野 秀樹「休養学:あなたを疲れから救う」東洋経済新報社,2024
阪原 淳「直線は最短か?~当たり前を疑い創造的に答えを見つける実践弁証法入門」ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス,2020