【MFA健康コラムVol.69】幸福を科学する その2
前回はカーネマンが挙げる「幸福を高めるための3つの要因」と、モノに対する考え方、対応が幸福にどうつながっているのかについて話をした。
今回は、「人とのつながり」「関係性」について、話していきたいと思う。
【関係性を大切にしてみる】
先に出たカーネマンの幸福についての3つの要素。そのうちの一つに「友人とのつながり」があった。
皆さんは、友人含め、自分以外の他人とのつながりはどうだろうか?
ロチェスター大学のデジとライアンが提唱しているものに、やる気やモチベーションの領域で有名な「自己決定理論」がある。
この自己決定の値打ちを支える心理的な要因として、自分が主体として決定するという「自律性」と、その行動の結果として一定の成果をあげることができるという「有能感」、それに加えて「関係性」が大切であると考えられている。
ミズーリ大学のシェルドンらは、この3つの要因を高めることが、人生の幸福につながるかどうかを検討した。
研究の結果、「関係性」を高めることをしたグループでは幸福感が上昇した。一方、「有能感」を高めることを目指したグループでは、幸福感はそれほど高まらなかったようである。
つまり、自分の能力を十分に実感することを目指して生活するよりも、親しい人を大切にすることを目指して生活する方が、幸福に与える影響が大きいと言えるのである。そしてその効果は、自分で物事を決めることを目指して生活することと同程度であったようである。
幸福への貢献という側面においては、有能感はそれほど大きな働きをしておらず、関係性には有能感を超える影響力があると言えるようだ。
【誰と関係を深めるのか】
では実際に、誰と関係性を深めていくのか?
また、その数は多い方ほど良いのか??
マサチューセッツ州でおよそ20年間継続して行われている「友人を介して、自分がどれだけ幸福度を得ることができているか?」という研究がある。
この研究では、親しい友人が幸せだと、自身の幸福度がおよそ15%上昇することがわかっている。
さらに、「友人の友人」が幸せだった場合でも、自分の幸福度は8%上昇することがわかっている。
また、ハーバード大学の5万人を対象にした「幸せは伝染するのか?」という調査では、幸福度が高い人たちの近所に住む親族や知人もまた、幸福度が高いことがわかっている。
反対に、「ネガティブな気持ちになる人」との付き合いは、自分を幸せにするという観点からも良いことはないだろう。近くに住んでいるだけで感情が伝染するとすれば、実際にネガティブな人との付き合いがある時、その影響は計り知れないだろう。
ただ数多くの人との付き合いよりも、幸せな気持ちになる人との親密な関係性が、自分の幸福度に影響する。これは科学でも証明されているのだ。
関係性を意識して取り組み、改善するのであれば、その人自身がどのような人なのかがポイントとなるのであろう。
今、実際に繋がっている人とのご縁も大切。
ネガティブな人が悪でもない。
その人との付き合い方を、ゼロか100かで考える必要もないだろう。
良い距離感で、自分から意識的に取り組めることは、自分の幸福度に関係してくるのである。
また、その方々との関係性を考える時、自分が心身ともに、その方々にとってネガティブな存在になっていないかも考えてみたい。
自分を労わり、心も体も良い状態で、自分から周りに与える幸福度がプラスになる存在でいたいものである。
参考書籍
「99.9%は幸せの素人」 星 渉 / 前野 隆司
「科学的に幸福度を高める50の習慣」 島井 哲志
「幸福の測定 ウェルビーイングを理解する」 鶴見 哲也 / 藤井 秀道 / 馬奈木 俊介