【MFA健康コラムVol.108】比較がメンタルに与える影響 その1
現代において、メンタルの不調をきたす理由は”日常”に隠れているかもしれない。
普段の習慣が、行動が、自身のメンタルに影響を及ぼす。
是非ご自身の日常と照らし合わせながら、お読みいただきたい。
【グループと私】
歴史上、群れから追い出されることは確実に死を意味した。
人間にとってグループはそれほど大事なものであり、なぜ脳が孤独を大きな危険だとみなすのかも理解できる。
長時間孤独でいると、脳は「何かあった時に助けてもらえない」と受け取る。そのため、普段以上にその人を警戒させ、常に最悪の事態に備えさせるため、眠りも浅くなる。
また「闘争か逃走か」の状態になるので、脳に「他の人は自分に敵意を持っているかもしれない」というシグナルが送られてしまうのだ。
”誰も助けてくれないのだから、油断するより警戒しておく方が良い。”
狩猟採集民であればそれで命が助かったかもしれないが、現代の私たちには悪い影響の方が大きくなる。
周りから見ると、その人がとげとげしく、疑り深く、思い切り嫌な人に見えてしまうことがあるからだ。そして、他人をネガティブに捉えるようになると、長期的には引きこもってしまう恐れも出てくる。
グループから追い出されないよう、脳は常に「私はこのグループに適しているだろうか?」「私は大丈夫?」と問いかける。
しかし、現代の私たちが生きる環境は、脳が進化した頃とはまったく違っているのだ。
【SNSから受ける無意識の影響】
今の時代ほど、自分がダメに思える理由を簡単に多く見つけられる時代はなかっただろう。
SNSでは常に、見た目には完璧な人生を見せつけられる。友人の加工修復済みの写真や、何千人というインフルエンサーのキラキラした人生が連続投稿されており、それと自分を無意識に比べてしまうことになる。
後ろに見えている景色やインテリア、化粧、照明まで、プロや加工の手を借りていると頭ではわかりつつも、である。とてもではないが自分には手の届かないようなレベルに見えてしまうのだ。
自分にとっての自分と他人を比べたら、いつだって自分が負け犬、もう本当に完敗である。
その影響で、私たちはヒエラルキーの下へ下へと落ちていき、グループから追い出されるリスクが高まったように感じるのだ。
それなのに私たちの多くが、起きている時間のほとんどで携帯を手にしているため、常に自分よりもカッコよく、美しく、賢く、自由で、リッチな人気者がいることを思い知らされることになる。
昔はグループもパッと見渡せる程度のサイズであったが、今の時代は世界中の会ったこともない人と競うことになるのである。
メンタル(心)を害するのは、実に当然のことであろう。
次回は、そんなメンタルを改善するためにできることについて、お話をしたい。
参考文献
アンディシュ・ハンセン「メンタル脳」新潮社,2024
一般社団法人メディカルフィットネス協会「ウォーキングトレーナー養成講習会テキスト」2024