【MFA健康コラムVol.68】幸福を科学する その1
皆さんは「幸せ」についてどのような解釈をお持ちだろうか?
好きな物を買えることが幸せであったり、好きな人と一緒にいる時間であったり、美味しい食事をしている時間であったりと、幸せのカタチは人それぞれであろう。
現代において、長期的な実験も含め、幸福を科学する書籍や研究は数多く出てきている。その中から幾つかを抜粋して紹介したい。
ご自身のライフスタイルに照らし合わせ、この機会に幸福とは何か?を一度考えるキッカケにして頂ければ幸いである。
【現状の理解と、幸福の要因】
国際的な調査会社であるギャラップ社による、世界幸福度ランキングというものがある。
さて、日本は何位くらいだろうか?
この報告は毎年発表されるのだが、日本はこの指標の回答者平均値が先進国で最低水準であり、その順位は近年低下傾向にある。2012年から2015年は40位台をキープしていたものの、2016年以降は50位台であり、2020年には過去最低の62位、2021年には56位という先進国では最低水準の順位となっているようだ。
この世界幸福度ランキングでの上位はフィンランドなどの北欧が占めている。
日本との違いは何なのだろうか?
また、そもそも幸福度に関係する要因には何が挙げられるのだろうか?
ノーベル経済学賞を受賞しているダニエル・カーネマンは、自身の研究を振り返るインタビューの中で、「幸福を高めるために我々は何ができるのか?」という問いに回答し、3つの要素を挙げている。
一つ目は「時間の使い方を変えること」、2つ目は「人生をより良いものにさせることに意識的に注意を向けること」、3つ目は「注意を意識的に向け続ける必要があるような活動に時間を使うこと」と述べている。
人生をより良いものにさせ、かつ注意を向け続ける必要があるものの例として「友人とのつながり」を挙げている。
人間関係は、常にその人に注意を向けていなければ希薄になってくる。その意味で、関心を寄せ続ける必要があるものの例として挙げられている。
またカーネマンは、贅沢な車を購入したとしても、すぐに慣れてしまい注意を向け続けるということはなくなる傾向についても指摘し、モノの消費では幸せになることができない可能性にも言及している。
これらは、パートナー、子ども、親族、友人など身近な人を常に大切に思い、時間をかけて関心を寄せていくことがいかに重要かということについて言及しているとも言えるのである。
また、ここでの「注意を向け続ける対象」は人間だけではない。
例えば観葉植物や動物、そしてモノをその対象とし、それらに対して愛情や愛着を持ち、お世話やメンテナンス等をしながら長く大切に関心を寄せながら育て所有していくのであれば、それらが幸せにつながる可能性が高まるのではないだろうか。
実際に、前述した幸福度ランキング上位の北欧などでは、その傾向が見られるようだ。
【モノに愛着を持ち、長く所有している】
幸福度ランキング上位のフィンランドと日本の違いについて、少しだけ掘り下げてみる。
モノを普段から「愛着を持って長く大切に使用しているか」という質問に対して、当てはまると回答した人は日本は半数弱の45%であったのに対し、フィンランドでは6割弱の59%となっている。
違いがより顕著なのは、「必要最低限のものを購入するか」という質問と「モノが家に溢れていないか」という質問である。
前者の質問に当てはまると回答した人の割合が日本が41%なのに対してフィンランドは73%、後者の質問に対しては日本が21%なのに対してフィンランドは46%となっている。
日本は必要最低限以上、すなわち無駄な消費をしていると自覚している人が相対的に多く、その無駄なものの存在もあり、家がモノで溢れている可能性が高いことになる。
また「愛着を持って長く大切に使用しているか」に関連して「代々受け継ぐようなモノを有しているか」という質問に対しては、当てはまると回答した人の割合は日本人が9%なのに対して、フィンランドは35%となっているようだ。
このことからも、フィンランドの方がモノを大切に長く使い続けていることが分かる。
そして、愛着があるからこそ代々受け継いでおり、だから時間をかけてメンテナンスを行う必要も出てくる。そしてまたその中で愛着が生まれる、という循環が成り立っている可能性が、日本より高いことが分かる。
そしてそういったことが、幸せに繋がっていくのではないだろうか。
次回は、注意を意識的に向け続ける必要がある「人とのつながり」について、述べていきたいと思う。
参考書籍
「99.9%は幸せの素人」 星 渉 / 前野 隆司
「科学的に幸福度を高める50の習慣」 島井 哲志
「幸福の測定 ウェルビーイングを理解する」 鶴見 哲也 / 藤井 秀道 / 馬奈木 俊介