【MFA健康コラムVol.101】休むことの価値 その1
この記事をお読みの方も、そしてその周りの方も”よく働いている”のではないだろうか。
人生の目的や夢に向かってか、または日々生活をする為か。
もしそんな時に知り合いから「少し休む方が良い」と言われて、行動に変えることはできるだろうか?
今回はそんな”休むこと”の我が国の現状をお伝えすることとする。
【寄り道という名の”休む”こと】
今の現状から目的地(目標や叶えたいこと、解決したこと)に向かう時、一直線に向かうことが果たして「最短」なのか?という考えがある。
経済学の考えにあるこの「高速道路効果」は、元を辿れば19世紀にドイツの哲学者ヘーゲルによって再発見された「認識の方法」を、経済学者のカール・マルクスが「ヘーゲルの弁証法」としてさらに定式化した「異質なふたつの要素を統合させる」考えから応用されている。
皆さんが今願う達成したい目標のため、もしくは人生の幸福度を更に上げることを目的に”仕事”を頑張っている場合、その目標や幸福度などは、時間軸をそのまま未来に伸ばしていくことで手に入るだろうか?
そんな時、仕事だけをただ一心に頑張るのではなくて、そこに繋がる異質なモノを組み合わせてみる。例えば、それが”休むこと”であればどうだろうか。
仕事を頑張るのは大前提として、”休むこと”が結果的に目標達成や人生の幸福度への「最短距離でのアプローチ」になるとしたら、どう感じるだろうか。
【疲れている人は25年で・・・】
日本リカバリー協会の調べでは、就労者10万人を対象に疲労に関する調査を行ったところ、ここ数年は全体の約8割が疲労を抱えて生活していることが判明したようである。
遡ること20年数年前、1999年に厚労省が60代までの就労者を対象に疲労度の調査をした時に、「疲れている」と答えたのは就労者の約6割であった。当初の6割も相当多いが、疲れた日本人は約25年で2割ほど増えたことになる。国民の”大多数の人が疲れている”と言っても良い結果である。
図 疲労状況(全国、男女計、20~69歳、2017-23年比較)単位:%
(一般社団法人日本リカバリー協会 日本の疲労状況2023より引用)
ちなみに、厚労省疲労調査研究班が2004年から疲労について調査したところ、慢性疲労症候群の人たちがもたらす経済損失の金額は、1兆2000億円にも上るようである。
その裏には、疲れているのに無理をして働き続けることで生産性が下がり、その結論が経済損失につながっていると言えるのかもしれない。
疲れているのに「それが当たり前」という国民性や、「休まないのが美徳」とされている風潮は、簡単に拭いきれない。その結果として、我が国では「疲れているので今日は休みます」と言いにくい文化が定着してしまっているのだろう。
次回は休むことの罪悪感と疲れ方について、お話する。
参考文献
久賀谷 亮「世界のエリートがやっている最高の休息法「脳科学×瞑想」で集中力が高まる」ダイヤモンド社,2016
片野 秀樹「休養学:あなたを疲れから救う」東洋経済新報社,2024
阪原 淳「直線は最短か?~当たり前を疑い創造的に答えを見つける実践弁証法入門」ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス,2020