【MFA健康コラムVol.81】幸福度とAWEの関係性 その2
前回は自然と幸福度の繋がりについてお話をした。
今回は、幸福度と「AWE」の関係について、お話をする。
「AWEな体験をしてみる」
幸福度の影響を与える自然や環境への関心、そしてそれを実現する為に必要な健康。そしてストレスの軽減。。。
それらが全て効果として得られる体験が「AWE」な体験と言われる。
日本では「ワオっ!(wow)」という表現がしっくり来るかもしれない。
何か圧倒されるものに出会った時の、一瞬、時が止まったかのようなあの感情。
一つの実験がある。
米カリフォルニア大学バークレー校のキャンパスに生えているユーカリの木は60mの高さがあり、北アメリカでは最も高いと言われている。
その木の下で学生たちが立ち止まったまま上を見上げている。木の下に立っている学生は実験の内容について何も知らされていない。
また、被験者の学生の半分は木に背を向けて灰色の校舎を見上げている。
1分間ユーカリの木を見上げる、もしくは校舎に目を向けた後に、目の前で起こる他者のアクシデントに助けに入るのか?というのがこの実験の流れ。
答えは、ユーカリの木を見上げていた学生の方がはるかに多く助けに入ったのだ。
AWEな体験をすると、その大きな物の存在を前に自分自身はちっぽけなものだと感じ(small-self)、自己中心的な考えが薄らぎ、正義感や他者を思いやる気持ちが増すのである。
さらに実験に参加した謝礼についても、ユーカリを見上げていた学生たちは、校舎に目を向けていた学生たちよりも少ない額で満足したのだ。
この実験では、AWE体験と向社会的行動には明らかな関連性があることが確認されたのである。
『人間は何かに感動すると、他者に対してより寛大で協力的になる』のである。
「AWEを表現するもの」
AWEは「音、体、表情」に現れると言われている。
一つ目の音(音声表現)。AWEは「特有の音」を持っている。
例えば「ああ」「おお」「うわあ」「わあ」といった音である。
何か感動した瞬間などに、言葉ではない言葉が出たことがあるのではないだろうか。
大袈裟に息を吸い込むのも、AWEの「聞こえ方」の一つである。
二つ目は体(身体表現)。何かを見たり聞いたりしている時に不意に涙が流れる。
映画を見ていて主人公の言葉に心を打たれ、腕の毛が逆立つ。背筋がゾクゾクする。
おそらくそれらの身体表現の中において、最も強烈な変化は「鳥肌」であろう。
三つ目は表情。AWEの体験をしている時の特徴は、ポジティブな感情と切り離せないはずの「笑顔」がない点である。
幸せな時や楽しい時、愛情や思いやりを感じている時に、笑顔にならない人などいないだろう。
ところが、AWEを体験している人は口元が緩み、目は大きく開き、眉が上がる。口がポカンと開き、目はゴルフボールのようになり、眉は額の生え際に届くほど上がる。
「AWEを体験しよう」
上記のような表現(音、体、表情)を体験されたことは、誰しも一度はあるのではないだろうか?
AWEの効果をもう少し並べると、①健康になる ②ストレスが軽減する ③時間のゆとりを感じる ④頭の回転が速くなる ⑤想像力が豊かになる ⑥自己中心的な意識が薄らぐ ⑦思いやりの気持ちが強くなる ⑧満足感が高くなる ⑨環境に優しい選択をする が挙げられる。
AWEの体験は何も「グランドキャニオン」や「オーロラ」を観に行きなさい、という体験だけではなくて、限りなく日常的に行えるレベルを意識的に実践してみてはどうだろうか。
わかりやすいのは自然。大きな木でも、大きな湖でも、綺麗な川でも良い。また、自分自身が尊敬する方に会いに行ったり連絡をとるのも一つ。そして圧倒的なスキルや芸術に出会うこともお勧めする。例えば美術館に行く、または歴史上の建造物や協会を観に行くなど。また、音楽についても自分の中でAWEな表現が発露するような曲調のものを選曲して聴くのもありかもしれない。
「幸せになろう」と言っても、一筋縄では理解し難いし、難易度が高いように思える。
しかし、我々が幸せになれるヒントは常に「日常」にあると認識し、それらを意識的に選択をしていく。その選択の連続が、結果的に幸福度を高めるのだろう。
大きなことでなく、まずは小さなことから。
まずは近所の公園へ散歩でも良いので、手始めにスタートさせてみてはいかがだろうか?
鶴見 哲也/藤井 秀道/ 馬奈木 俊介,「幸福の測定ーウェルビーイングを理解する」,中央経済社
カトリーン・サンドバリ / サラ・ハンマルクランツ,「Awe Effect」, サンマーク出版