【MFA健康コラムVol.112】集中力を”具体化”する② その1
前回は集中力と神経伝達物質の関係を見ていった。
今回はその神経伝達物質であるドーパミン、β(ベータ)エンドルフィン、ノルアドレナリンを分泌する方法や状況について説明することとする。
自身の集中力の傾向を改めて見つめ、日常から実践していく参考にして頂きたい。
【ドーパミンの分泌を促すテクニック】
集中力のスタートはドーパミンによる力を先行にするほうが良い。では、そのドーパミンは、どのような時に分泌されるのだろうか?
それは自分の好きなこと、興味や関心、好奇心が湧くものに目を向けることである。しかし、そう言われると「自分の好きなものが分からない」という意見が出てくるかもしれない。
そこで自分の中で(脳内)、「今、自分の脳内でドーパミンが出ている」という気付きを感じ、味わうことが大切になってくる。
これまでの人生を振り返れば、自分の好きなことに没頭して取り組んだ時期もきっとあったはず。しかし、それが仕事や学びの面での集中となると、ピンっと来なくなる可能性もある。これは、ドーパミンが出ている瞬間に意識を向けてきた経験の数が少ないだけなのかもしれない。
日々の暮らしの中で、自分自身の知的な興味、体を動かすことの楽しさ、何かを発見する喜び、不思議なことに触れた驚きを大事にしてみる。好奇心という源泉を上手く活用し、自分の”興味が湧くもの”に目を向けてみるのである。
生活の中で言えば、コーヒーが好きな人は、「コーヒーが飲みたい」と思い、道具をセットし、淹れている時に最もドーパミンが出てくる。飲み始めるとドーパミンの分泌は少しずつ下がってくる。
その代わり、求めていた香りや味を楽しみ「美味しいな」と感じたら、次はβエンドルフィンの量が増え、
ドーパミンによる高い集中状態を持続させてくれるのだ。
ドーパミンは、目的となる何かを手にいれた瞬間よりも、それを求めている間の方が量が多くなるのである。
【βエンドルフィンの分泌を促すテクニック】
βエンドルフィンは、自分が好きなことをしているとき、注意を向けた対象を楽しめている時に分泌される神経伝達物質である。人に快楽を与えてくれる物質として「脳内アヘン」と呼ばれることもある。
いずれにしても私たちが気持ちいい、楽しい、嬉しい、ウキウキするといったポジティブな感情を持っている時に出るのが、βエンドルフィンなのだ。
集中力との関係でみた場合、βエンドルフィンは「ドーパミンが放出されやすい脳の状態を作り、ノルアドレナリンの放出とともに増えてくるストレスホルモンのコルチゾールを和らげる働き」がある。
脳には側坐核と呼ばれる部位があり、この側坐核がドーパミンの働きを抑制してしまうのだ。これは高揚感が高まりすぎるのを抑えるための働きで、私たちが生きていく上では必要なこと。しかし、集中力を高めるという意味合いではドーパミンの放出が持続した方が好ましく、側坐核にはおとなしくしていてもらいたい。
βエンドルフィンにはこの側坐核の働きを抑制する役割があり、結果的にドーパミン先行型の集中を持続させ、高い学習と集中力を保ってくれるのである。
日常においてβエンドルフィンに働いてもらうためは、「物事を楽しむ能力」が重要な役割を果たしてくる。
物事を楽しむ能力、楽しめる能力は誰もが持っている。
しかし、日々の生活に追われている状況が続くと私たちは自分の能力に蓋をし、抑制してしまいがちになる。
子供の頃に夢中になった遊び、大人になってから知った没頭できる趣味などを思い出してみる。それらを通じて「今、楽しいな!」「しみじみ楽しめているな・・・」と思える時間を味わうことである。
また、運動中、特に有酸素運動などを通じてもβエンドルフィンの分泌を促すこともできるので参考にして欲しいところである。
次回は「ノルアドレナリンの分泌を促すテクニック」について、お話をする。
参考文献
青砥 瑞人「4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中」KADOKAWA,2021