【MFA健康コラムVol.111】集中力を”具体化”する その2
前回は集中力を高める鍵を握っている主な3つの神経伝達物質であるドーパミン、ノルアドレナリン、β(ベータ)エンドルフィンの働きについて紹介した。
今回はドーパミン、ノルアドレナリンのバランスとβエンドルフィンともとに集中力を4つに分類し、それぞれについて解説する。
【神経伝達物質のバランス】
前回のイメージを前提に、更に集中力にフォーカスを当てていく。
私たちが何か行動を起こす時は、たいていドーパミンとノルアドレナリンが作用している。その両者のバランスを見ていくことで集中力を4つに分類してみる。
①「ドーパミン、ノルアドレナリン共にわずかしか分泌されていない」
少しのドーパミンと少しのノルアドレナリンで行動している時は、強く求めてもいないけど、大きなストレスも感じていない状態。
いつもの決まりきったパターンでなんとなく作業を進めているとき、マンネリを感じつつもそれが不快ではない精神状態の時など、日々の生活を振り返ってみると、意外と手応えのない時間が多いものである。
これは惰性的に何かに向かっている状態で、ドーパミンとノルアドレナリンの効果を活用しきれず、高い集中力は望めないことになる。
②「ノルアドレナリンの量が多く、ドーパミンが少ない」
ノルアドレナリンの量が多くなっている時は、同時にコルチゾールというストレスホルモンが分泌されやすくなっている。
大きなストレスやプレッシャーを感じている状態であり、そこから逃れるため、あるいは立ち向かうためにノルアドレナリンがあなたを行動に向かわせる。
このタイプは一時的に集中力が高まるが、ストレスを感じるようなできれば避けたい行動に取り組んでいるだけに、長続きはしない。
③「ドーパミンの量が多く、ノルアドレナリンが少ない」
興味や関心が高まり、好奇心を持っているとき、ドーパミンの量が増え、高い集中力を発揮することができる。
新しい学びや取り組みに楽しく向かっている時が、この「ドパミン先行型」の集中状態である。また、大好きな映画や漫画、音楽やスポーツなどの趣味に没頭しているもドーパミンが集中のエネルギー源となり、同時にβエンドルフィンも分泌されるので集中状態が持続する。
しかし、新しい学びや取り組みは半ばで困難がつきまとう。
その壁にぶつかったとき、ドーパミンによる集中は途切れやすく、最初は興味を持っていたのにいつも間にか②の「ノルアドレナリン先行型」の集中になっていることがあり、ストレスを感じてしまう可能性がある。
そうならない為にも、後述する(④)βエンドルフィンの効果をうまく活用できると集中力を持続できるようになるのだ。
④「ドーパミン、ノルアドレナリン共に適度に分泌され、βエンドルフィンも働く」
集中力が高く、なおかつ持続する最も理想的な状態。
どんなに好奇心を土台にしたものであっても、大人になってからの学びは多くのエネルギーが必要で、モヤモヤとしたストレスがかかってくる。すると、ノルアドレナリンが分泌されやすく、それが過度になると集中が途切れやすい。
しかし、行動のスタートが好奇心であったり、強い想い、夢であったり、自分の脳にウキウキ・ワクワクを導くことができると、高い集中力がもたらされることになる。このワクワクした状態はドーパミンを誘発しノルアドレナリンとはまた違った形で集中力を高めてくれるのだ。
一方、ウキウキした状態は、脳がその状況を楽しめているのでβエンドルフィンが働く。βエンドルフィンはドーパミンが更に出やすい状態にするだけでなく、ストレスを緩和する作用もあるので、大きな夢や長期的な目標などを実現するための持続可能な高い集中に不可欠となってくるのだ。
さて、記事を読むだけで思い当たる過去がリンクする方も多いだろう。自分がどのタイプなのか、一度整理してみても良いかもしれない。
今や、集中力は本人の問題ではなく、科学で解決の糸口が見つかるかもしれない時代なのだ。
次回は更に集中力を掘り下げ、3つの神経伝達物質を日常の中で分泌する方法をお伝えすることとする。
参考文献
青砥 瑞人「4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中」KADOKAWA,2021