【MFA健康コラムVol.97】ストレスの功罪と緩和策 その1
年明け早々、能登地方を襲った大地震は、年始のワクワクする気分を一瞬で奪い去っていった。避けようのない有事は、その分多大なストレスがかかってくることが想像できるだろう。
今回はそういった有事ではなく、”平常時”に何気なく感じてしまっているであろうストレスと、その対処方法をお伝えすることとする。
【ストレスとうまく付き合ってみる】
ストレスと聞けば、どうしてもマイナスなイメージを持つことが多いだろう。
しかし、ストレス環境下だからこそ、パフォーマンスを発揮できたという経験をお持ちの方もいるかもしれない。
ストレスがない日常は一見、幸せに感じるかもしれないが、そのストレスがあるからこそ今の自分が在るとも言えよう。
まずはストレスとうまく付き合っていく為の前提を3つご紹介する。これらはストレスに対する”認識”として押さえておきたいことである。
①ストレスには良い面もある。必要だから存在する。
ストレスには悪い面もあれば良い面もある。
ストレスそのものは必要だからこそ備わっている、重要なシステムなのだ。
②自他のストレス反応を同一視しない
自分と他人のストレス反応を同一視せず、違いを受け入れるということ。一人ひとりのストレス反応のありようは異なってくる。
ストレス反応のあり方は、生まれや育ちにも影響し、一人ひとり異なった形で現れるため、自分のストレス反応のあり方が他人にも当てはまると考えてはならないのである。
③自分のストレス反応に寄り添う
一人ひとりのストレス反応は異なる。ストレスを味方にし、ストレスを力に変え、成長、幸せを高めていくためには、自分で自分のストレス反応と向き合い、寄り添っていくことが、最も手っ取り早い方法なのである。
神経科学の発展により、その力をもとにストレスを知ることができたなら、今度は自分自身の記憶、身体、ストレスと対話し、自分自身のストレス反応に寄り添ってみよう。
そうしていくうちに、一歩また一歩とストレスとの距離が縮まり、ストレス反応と苦楽を共にしていく中で、ストレス反応はあなた自身を成長させ、幸せに導く最高のパートナーに進化していくのである。
【避けるべきストレス】
良い面もあれば悪い面もあるストレス。
では、悪い面のあるストレスとはどのようなものなのか?
「慢性的なストレス」
必要な時に起こる必要なストレス反応は私たちのパフォーマンスを高め学びを強固にしてくれるが、途切れない慢性的なストレス反応は、私たちの心身を蝕む可能性が大いにある。
慢性的なストレスとは、たとえ過剰なストレスでなくても、常にストレスを抱えているような状態である。
慢性的なストレス反応により、コルチゾールというストレスホルモンが海馬に作用し続けると、海馬が萎縮するという研究もある。これがうつ病などに関与していることが疑われているようだ。
これらの対処法として、ストレス反応があまり高くない冷静な時にこそ自分の内部環境との対話や軽微なストレス反応に注意を向けて、自身のストレス反応に気づくことが重要となってくる。
「過剰なストレス反応」
”過剰な”とは、ある一時点において、脳内、身体内の平衡状態が大きく乱れた状態を指す。
過剰なストレス状態は私たちを心理的危険状態に追いやる。
脳内では扁桃体が強く反応して強い恐怖や不安の状態を引き起こし、その場から回避する為の反応を誘導することになる。
こうなれば、分かりやすい表現で言うと「考えている場合じゃない、とにかく逃げろ」というのが脳の選択になってくる。
また、正しい判断と行動ができずに、平常時では行わないようなことを実行に移してしまう。
こうして、インパクトの大きいネガティブ体験は、行き着くところ”トラウマ”となり定着してしまうのである。
どちらのストレスにおいても、”ストレスに気づくこと”が大切であり、そのために自身の感情をモニターし俯瞰視する一つの方法として、次回は”セルフコンパッション”を紹介する。
参考文献
クリスティン・ネフ,クリストファー・ガーマー他「マインドフル・セルフ・コンパッション・ワークブック」星和書店,2019
青砥 瑞人「HAPPY STRESS ストレスがあなたの脳を進化させる」SBクリエイティブ,2021