【MFA健康コラムVol.80】幸福度とAWEの関係性 その1
3月20日、11回目となる国連の世界幸福度レポートとランキング2023年版が、国連が定めた「国際ハピネスデー」に発表された。
6年連続1位のフィンランド。そして日本の現状は47位。その違いはどこから来るのか?
幸福度を高める「AWE」な体験についても触れながら後述していく。
【非日常的な自然との関わり】
近年の幸福度研究において、「自然とのつながり」が統計的に頑健に幸福度を増大させていることが示されている。
この記事をお読みの方々は、普段から自然と触れ合う機会はあるだろうか?
皆さんが住んでいる地域はどの程度自然が豊かだろうか?
また、近隣に車や公共交通機関で気軽に行けるような魅力的な自然はあるだろうか?
近年、日本においてはキャンプブームが起こり、人々が休みの日に1人もしくは友人や家族と出かけることも多くなってきた。コロナ禍もあり、その活動に拍車をかけたような流れである。
では、幸福度ランキング上位のフィンランドは、どのように「自然」と関わっているのだろうか?
フィンランドの人々と日本の人々の違いは、フィンランドの人々にとって森や自然が「日常」であるという点だ。意識的に森に行くのではなく、無意識的に森に行くのである。
あるフィンランド人はこう言っている。「気づいたら森に来ていました。」森に行くことが日常の一部になっているわけだ。
一方、日本では前述したキャンプブームもあり、「非日常」を求めてレジャーで森に行くという発想が多いのではないだろうか?
ちなみに「非日常」としてレジャーにいくことは幸福度に結びついているか?という研究がある。
この研究の結果、「非日常」としてレジャーに行く人は他の人と比較して普段の幸福度が低いということが示されたようだ。
一見すると解釈が難しい結果であるが、こう考えて欲しい。それは「非日常」を求める人は、普段の生活に何らかの不満を抱えており、そこからの逃避として「非日常」を求める。普段の生活に不満を持っているから「非日常」を求める。しかし、その「非日常」の後には、「不満のある日常(ストレス環境)」が待っているということに注意が必要であろう。「非日常」を体験したその日は確かに幸福感が得られるかもしれない。しかし、人生の大部分は「日常」の時間である。
あるフィンランド人の言葉をもう一つ紹介する。「疲れたら森に行く」。
真の意味で自然を身近に感じる為には、自然と触れ合うことを日常レベルまで引き下げていく工夫が必要なのかもしれない。
【幸福度の要素”寛容さ”にも繋がる】
自然との繋がりは自身の”環境配慮行動”と相関が高いことも示されている。
すなわち、自然との繋がりを日常的に感じている人は、そうでない人と比較して、環境にやさしい行動を実践しているということである。
これは考えてみれば当たり前のことであり、自然との一体感を感じている人にとって、自然が破壊されることは自分の体が傷つけられるのと同等ということなのだと考えられる。この環境配慮行動は日本とフィンランドを比較しても、その行動に差があることが分かる。
利他的な行動(ボランティアや環境活動)を行うことは幸福度を高めるという研究もあり、こうした行動がフィンランドの幸福度をより高めている可能性も考えられる。
日本の場合は、幸福度のうち「他人への寛容さ」が、他国に比べて著しく低い。要は、他者との立場や意見の違いに対して、理解を示し合うことを不得手としているということである。
「他人に興味を持ち、行動をしましょう」と言われて実行できる方が少ないことを考えると、前述した「自然との繋がり」をまずは日常的に実践してみる。そこから少しずつ環境配慮行動の頻度を増やし、結果的に幸福度を上げていくという流れが必要なのかもしれない。
次回は幸福度と「AWE体験」について、お話をしたい。
鶴見 哲也/藤井 秀道/ 馬奈木 俊介,「幸福の測定ーウェルビーイングを理解する」,中央経済社
カトリーン・サンドバリ / サラ・ハンマルクランツ,「Awe Effect」, サンマーク出版