【MFA健康コラムVol.76】”習慣”について理解を深める その1
2023年。何か新しいことを始めようと決心したであろう年始め。
さて、そこからその「誓い」は無事に実行され、皆さんの生活に定着しているだろうか?
人間は、日常の行いを無意識的に習慣化させて生きているにも関わらず、新しい習慣は定着しにくい。
運動を自身の習慣にするにも、運動指導をする側にとっても、壁になるであろう”習慣”。
今回の記事が習慣の理解と克服のキッカケになればと思う。
【45%は習慣化されている】
デューク大学の研究によれば、私たちの行動の約45%は習慣で成り立っているようだ。
実際には、45%という数字以上に重要といえるかもしれない。
なぜなら、習慣とはしばしば繰り返される行動のことをいい、その習慣が今の自分を作り出し、そしてその積み重ねが将来の大きな成功または失敗に繋がっていくからである。
何気ない日常の行い。起床後に顔を洗い、歯磨きをして、服を着替える。それらが「なし」となった場合、どんな感情になるだろうか?
また、お風呂の中で髪の毛と体を洗う順番を今日から逆にする、または洗うことと入浴のタイミングを逆にするとした場合、どう思うだろうか?
その順番を逆にすることが仮に健康にとって非常に効果があると知ったとしても、おそらく前向きな感情にはならないはずだ。それくらい、習慣が私たちの生活に当たり前のように入り込み、そして知らず知らずのうちに私たちに影響を与えていると言えよう。
【脳の習慣化】
自分が変われないのは、脳の仕組みがそうさせているのだ。そう考えればどうだろうか?
自分の意志の弱さ、メンタルに起因する継続性のなさに落胆する人もいるだろう。何か新しいことを始めるとなった場合、脳はいつも以上にエネルギーを必要とする。逆に、いつも通りの行いである習慣化されたものは、効率的であり、エネルギーの節約になってくる。
脳にある「自己保存の法則」がある限り、私たちは現状維持がとりあえず大好き。それだけでもまずは認識していただきたい。
良い方向に変わるにも、悪い方向に変わるのも、その変化を嫌がるのだ。その脳の特性を、まずは理解してみよう。
【人間の脳は間抜けである】
そう聞くとどんな気持ちになるだろうか?
残念なことに、この間抜けな部分が脳の中で大きな力を持ち、脳全体を支配している時間も長いのである。別の指示を与えない限り、特定のパターンを認識し、それを繰り返すしか能がないのである。
脳においてこの部分は大脳基底核と呼ばれている。
しかし、脳には本当に賢いもう一つの部位がある。額のすぐ裏側に位置する前頭前野と呼ばれる部位だ。
この部位は、何かをした時の結果や長期的な利益を理解できる脳の”司令塔”であり、有難いことに大脳基底核を抑え込む力をもつ。短期的な思考と意思決定を司るのもこの前頭前野である。
大脳基底核は人間だけが持てる高レベルの目標を認識できず、それに気づくこともない。それでも、自動的に繰り返し、エネルギーを効率的に使うのは得意。
前頭前野のように知的ではないが、脳の中で重要な働きをしていることは間違いないのである。
その大脳基底核などの作用によって自動化された習慣により日常を過ごす中において、前頭前野はそれらの自動的な繰り返し機能を管理し、もっと良い方法があるとわかった時には、自動化された動きを止め、別の行動を取らせる。
しかし、これを繰り返し実行できない理由が、前頭前野の活動には大きなエネルギーを要するから。その為、前頭前野の習慣への監視や別の方法をとる選択肢が弱ることで、現状通りの習慣の方が居心地が良く、いつも通りの日常を送ることになるのである。
次回は、良い習慣と悪い習慣について、話をしたい。
参考書籍
三浦 将「自分を変える習慣力」
イ・ミンギュ「『後回し』にしない技術」
ステューヴン・ガイズ「小さな習慣」