【MFA健康コラムVol.61】歩くことの前に知っておきたいこと その2
全国的に梅雨入りし、屋外での運動に制限が出る季節となった。
そんな時だからこそ、梅雨の合間の運動に、季節を感じられるウォーキングがオススメである。
前回はそもそも歩くにあたっての考え方について、「真っ直ぐ立つ」ことや「正しく歩く」ということについて述べた。
今回は歩くにあたっての疑問でもある、歩く時の腕の振りや、シューズ選びについて述べたいと思う。
【腕を振ることの意味】
13世紀初頭に書かれた鴨長明の「方丈記」には「今、一身をわかちて、二つの用をなす。手の奴、足の乗り物、よくわが心にかなへり」という一節がある。現代語訳でいうと「自分の思うように身体が動くのは、手は使用人で、足は体を運ぶ乗り物だからである」という意味である。
この一節から読み解くと、足は人が動く上で必要であり、手は何かを行うのに必要と解釈できる。
ということは、歩くときに手は使わなくて良いのか?と解釈ができないわけではないが、ほぼ800年前のこの一節は、歩くにはそれだけ「足」が大切であるというメッセージとも取れる。
歩くための足、その足の筋肉や関節の動きはどのような状態か。今一度、意識を向けてみて欲しい。
では、そもそも歩く時に腕を振る効果として、何があるのだろうか。
人は歩いたり走ったりするときに、特に意識することなく自然と腕を振る反面、何かを持った状態であったりポケットに手を入れた状態でも、腕を動かすことなく歩行動作が出来る。
腕を振る効果として、重心位置のばらつきが抑制されるという報告がある。
角度で言うと60度以上に強調して行うことで、その動き自体が外乱刺激として体に作用し、体幹運動が制御されるため、過度な重心の動揺が抑制されると考えられる。
また、腕を振ることは運動のリズムを高め、歩幅を大きく取ることを可能にする。
高齢者においては歩幅が小さく、体幹が前傾姿勢となりやすい。そこで腕の振りを大きくすることで、歩幅は広がり、かかと着地時の体幹前傾は小さくなり、膝は伸び、つま先を上げる角度は大きくなり、より若者の歩行動作に近い動きの獲得を可能にする。
歩く時の腕の振りは歩行を安定させ、より大きな動きを生み出すのだ。
【靴選びのポイント整理】
ウォーキングや運動を始めよう!となった時に、肝心のスポーツシューズを持っていないケースもあるだろう。そんな時に、靴屋に行き、自分に合ったシューズを選ぶ基準はどのようにすれば良いのだろうか。
人の足の大きさは、朝と夕方では0.5cm〜1.0cmもの差がある。
時間とともに足部に滞留した組織液や血液が溜まり、足のサイズが大きくなるのである。
少し大きいサイズの靴は靴紐を締めて履けば良いとするならば、購入する時間帯は午後の方が良いことなる。
しかし、それはどの時間帯でも万能に履けるということ前提としているため、仮に運動の時間が確実に午前である場合は、午前中にフィットする靴を購入することを考えるのも一つだろう。
また、靴はその場で履いてフィットするかを確認するだけに留めないことも重要である。
履いた時の”履き心地”の感覚も大切であるが、靴を履いて動いた時の感覚は更に大切なポイントとなってくる。もちろん限度はあるが、その場で足踏みをして軽く歩いてみたり、しゃがみ込み動作などを実際に行ってみて欲しい。動きを伴うことで靴の良さを実感もできるだろうし、意外なポイントが気になるかもしれない。
購入時間を考慮し、上記のように試し履きをしてみながら、自分に合ったスポーツシューズを選んでみると良いだろう。
気に入ったシューズは、ウォーキングへのモチベーションを上げてくれる。是非そんなシューズを見つけてもらいたい。
冒頭にも触れたこれからの梅雨時。発汗作用が悪くなる分、体内に熱も篭りやすい。
その熱を外に発散する意味でも、時間帯や天候を見て、積極的に汗ばむ程度のウォーキングを実践してみてはいかがだろうか。
参考文献
「正しく歩いて、不調を治す。」田中 尚喜
「最大効果のウォーキング」中野ジェームズ修一
「腕の振りが歩行に及ぼす影響」安藤正志