【MFA健康コラムVol.84】ウォーキングを指導する上でのポイント その2
前回は「カラダのこと」「指導時の気付く力」についてお話した。
今回は指導者にとって最も難しいと言えるであろう「習慣化の壁」について後述していく。
【運動指導の壁は習慣化してもらえるかどうか】
運動指導をする時に、間違った認識を正しい知識へ変えていく関わり方は、イメージが湧きやすいだろう。
では、その知識を定着させた後に、「運動を習慣化」してもらえるだろうか?
自分自身でも振り返ってみて欲しいが、何かを習慣化することの難しいこと。頭で分かってはいるものの、「やらなければならないこと」は、習慣化することが容易ではない。
ここで一つの言葉を紹介したい。
「強い感情を引き起こさないことが、習慣化の利点の一つである」
これは、「良い習慣、悪い習慣」を書き記した心理学者のジェレミー・ディーンが残した言葉である。
何かを始める時にモチベーションを上げることや、効果・効能を意識して取り組むことが、反対に習慣化の邪魔をしてしまうという解釈ができる。
行動が習慣に変わり始めるころには、その行動への感情は薄れていく。退屈でつまらなく思えてくるかもしれない。
であるならば、最初から習慣化が目的であればあるほど、感情を高めてから行動を始めるのではなく、いかにして行動を先に誘発するかが大切になってくるのだ。
運動指導時における分かりやすい説明よりも、習慣化で得られる未来地図よりも、行動を適切に継続的に促す指導の方が勝ることがあるのだ。
例えば、効果を意識せずに、とにかくできることを始めてみる。「いつからできるのか?」を最初の質問とし、指導者が一緒に取り組むことで「一人でチャレンジしている孤独感」も払拭できるかもしれない。
たった1回の運動指導が、単発的な行動であるにも関わらず、それによって身体が軽く感じたり爽快感を味わったりすることで、次回への継続に繋がることになるかもしれない。
ウォーキングの正しさを教えるだけであれば教科書レベルで良く、インターネットで調べれば正しいフォームはいくらでも検索できる時代だ。時代の変化と共に指導者へのニーズも変化していく中で、知識だけではAIに負けることになるだろう。
大切なことは、目の前の方に対して指導者がどのようなスタンスで、距離感で、関わるかということ。また、単発の指導であったとしても、継続的に習慣化してもらえるように援助しているかどうかということ。
誰もが頭では分かっているけれど忘れかけているようなことを、適切なタイミングで伝え、たった1回の指導であっても習慣化のきっかけを与えらえる指導者が、求められてくるのかもしれない。
メディカル・フィットネス協会,「ウォーキングトレーナー養成講習会テキスト」
スティーヴン・ガイズ,「小さな習慣」, ダイヤモンド社