【MFA健康コラムVol.83】ウォーキングを指導する上でのポイント その1
今回は前回に続き、ウォーキングについての記事をお届けする。
運動指導をされている方で、かつ、ウォーキングを指導していきたいという方は特に読み進めていただきたい。
ウォーキングという歩行動作はあらゆる運動の基本にもなり得るので、ウォーキング指導に限らず、大切な部分を自身の活動と照らし合わせてみて欲しい。
今回は「カラダのこと」「指導時の気付く力」について後述していく。
【当たり前のことが当たり前にできること】
ウォーキングという”歩く”行為は、人間においては原始動作と言われる部類だ。
他の、例えば呼吸運動などと同じく、基本的には「無意識的」に行える。
しかし、その無意識的な行いに、成長過程や生活環境からの影響による良くない動作やパターンが習得されてしまうことがある。
歩くだけでも足が痛い。膝に違和感がある。股関節が・・・。ただ歩いているだけなのに、なぜか痛みと違和感が伴うわけだ。
この場合、歩くという行為が無意識的に行える運動であったとしても、体の中で起こっているエラーを改善しスムーズな動作パターンの学習が必要になる。
その解決のヒントは「カラダ」だ。
例えば、”静止時”と”動作時”で分けて考えてみる。
静止時の「真っ直ぐ立つ」ことと動作時の「歩行」では、歩行の方が動きを伴う上に、重心の移動も負荷として体にかかってくる。真っ直ぐ立つことより歩行の方が難易度が高いのだ。
では、歩行より難易度が低いはずの真っ直ぐ立つ時の姿勢が悪いとどうなるだろうか?
真っ直ぐ立つことから前方への重心移動が歩行動作とするならば、”真っ直ぐ立てているか?”は、歩行動作に影響を与えるということが、容易に想像できるだろう。
立つ姿勢は、10人が横に並べば10人が違ってくる。
キレイな姿勢が何なのかはここでは省略するが、その姿勢を整えることが、歩行動作の向上に結果的に繋がってくるのだ。
また、少し細かい動きの分析になるが、その場で腕を上げる”バンザイ動作”はスムーズに行えるだろうか?
下半身では、立った状態で片足を太ももが地面と並行になるまでスムーズに上げることが出来て、かつ、その際にバランス保つことができるだろうか?
歩くには肩関節と股関節の可動域やバランスが必要になる。
上記のような動作がスムーズにできることも、歩くことの質を向上させることに繋がるのだ。
歩くことで発生する痛みや違和感は、フォームなどの歩行動作自体が悪いのではなく、実は各々の関節がスムーズに動いていないことが原因だったりするかもしれないのである。
【少しの変化に気づく関わりを持つ】
ウォーキングを実際に指導するとなった場合、”正しいフォーム”への誘導がメインとなるだろう。
それについては前回の記事でお伝えしているので省略する。
効率的な正しいフォームへの誘導は大切であるが、指導を繰り返す中において「受講者の変化に気付けるかどうか」は、心がけておきたいところである。
その為には1回1回の指導時の受講者のフォームを事細かく覚えておくよりも、”何となくいつも(前回)と違うな”ということに気付けるか、がポイントだ。
視点を一か所に絞るのではなく、全体を把握する。部位、関節の1つ1つにフォーカスするのではなく、受講者の全身を見る。歩行自体を見る。その中にある違和感や違いを、まずは感じることができるかどうか。
先に述べた関節の可動性、連動性が指導の要点になる場合、動き自体を見てその変化に気づくことが、より充実した指導につながっていくのではないだろうか。
そのいつも通りではないフォームは、指導時に受講者を観察するだけでなく、あなたが普段何気なく歩いている歩道で見かけた人から学ぶことができるかもしれない。
基本的に人は歩いて移動する生き物なので、歩行に関する情報は指導時の受講者だけでなく、日常からでも沢山のヒントを得られるわけだ。
日常で培った歩行に関する観察の多さが、目の前の受講者の変化に気付くキッカケになるかもしれないのである。
そう思うと、日常は学びにあふれていて、ぼんやりしている暇はないといえるのではないだろうか。
メディカル・フィットネス協会,「ウォーキングトレーナー養成講習会テキスト」
スティーヴン・ガイズ,「小さな習慣」, ダイヤモンド社