【MFA健康コラムVol.58】「なぜ歩くのか」を考える その1
春になり新しい取り組みを始めた方もいることだろう。運動習慣を身につけたいという方もいれば、早起きを習慣化する取り組みを始めた方もいるかもしれない。
そんな中、運動習慣の一つになり得る「ウォーキング」は比較的安易に始めることができる。
では、そのウォーキングを始める・行う目的には何があるだろうか?
世の中にはあらゆる情報が錯綜し、その目的ではなく「手段」が一人歩きしてしまうことがある。「正しい」とされる歩き方や、効率の良い歩き方などが多く書籍化されたりしている。
今一度立ち止まり、「ウォーキングを行う目的には何があるのか?」「そのように手段を選ぶのか」についていくつか紹介したい。
【意識しやすい手段】
ウォーキングを行う「目的」は人それぞれであるが、「手段」はある程度、客観的な指標が設定されやすい。
例えば、国民健康・栄養調査(2017年厚生労働省)によると、1日の平均歩数は男性が7,194歩、女性は6,227歩。
ただし、10年前の2005年の調査を見てみると、男性が7,561歩、女性が6,526歩となっており、歩数は低下傾向にある。しかも2017年からはコロナ禍も挟み、外出制限やテレワークの推進などにより外を出歩く機会も時間も減っていることだろう。
また、「正しい歩き方」としては「姿勢を正して」「大股で」「目線は下ではなくて少し遠くを見ましょう」などというキーワードもよく耳にするのではないだろうか。
こういう情報だけを並べてみると「歩いていないな」「1日に〇〇歩以上、歩かないと」「大股で歩かないと」という義務感などが生じる可能性もある。
もちろん、そういった情報を得て意識的に行うことで、何かしらポジティブな心や体の変化を後付け的に実感する方もいることだろう。
しかし、情報を得ることは歩くことを始める「キッカケ」にはなるが、そもそも「なぜ歩くのか?」という目的を理解しておくことが、人によって手段が違ってくることにも気付けることになるだろう。
様々な目的があって良いのだ。
ウォーキングの目的や得られる効果などを後述する。
【走るより歩く方が痩せるとしたら??】
走ると痩せるという話はよく聞くが、もしも、歩く方が痩せるとしたら、どんな感情になるだろうか?
走ると痩せるというのは当たり前の話であるが、これは幾つかの条件が揃う必要がある。
「毎日走ることができる時間が必要」「長い距離を走ることができる体力が必要」、そして何より「走り続けることを習慣化する必要」がある。
これらの条件はハードルが高く「よし、ダイエットの為に走ろう!」と目的を持ったとしても、そのハードルの高さに挫折する。という流れを経験したことがある方もいるのではないだろうか。
普段からトレーニングを実施してある程度の距離を走れる、という方は「歩く方が痩せる」よりも、「走ることで痩せる」ということを優先し、実践をする方が良いだろう。
しかし、走ることで翌日も、その翌日も筋肉痛が続いたり、人によっては関節の痛みなどを伴うような方は、まずは歩くことで運動量を増やしてみると良いだろう。
走るとき、筋肉の中では主に速筋繊維を使う。
速筋繊維は速く力強く動くという特徴を持つが、回復に時間がかかってしまう。エネルギーとしては主に糖を代謝するので、糖だけ消費することになる。
その反面、歩くことは筋肉の中で遅筋繊維を主に使うことになる。
この遅筋繊維は速い動きは苦手だが疲れにくく、回復に時間を要する必要はない。つまり毎日実施することが可能ということだ。
また、脂肪と糖をエネルギーとするので、きちんと動かすことができれば、痩せることに繋がるのである。
「走るより歩く方が痩せやすい」というのは、運動初心者や、日常生活の中で必要な筋肉が衰えて運動不足になっている方が対象になる。
また、準備や時間などを考慮しても「歩く」ことは日常にも組み込みやすく習慣化もしやすい。
その継続した取り組みが結果的に、走るより歩く方が痩せやすいことに繋がるのである。
要は、痩せるという「目的」と、自身の体力や筋力などを考慮して、歩くのか走るのかを選べばよいのだ。
しかし何よりも1番重要なことは、継続するという「習慣化」であることを、忘れはいけないのである。
次回は「目的」にあわせて、ウォーキングの「手段」をどう選ぶかについて、話をしたいと思う。
参考文献
「正しく歩いて、不調を治す。」田中 尚喜
「最大効果のウォーキング」中野ジェームズ修一
「ウォーキング脳」加藤 俊徳