【MFA健康コラムVol.47】脳とアイデア創出の関係 その1
季節柄、来年に向けての動きやその準備をしている方もいるだろう。
「何から準備すれば良いか?」「新しい取り組みをするとなった場合、どのようなことが出来るだろうか?」
今回の記事が、そんな「何か新しいこと」に取り組む方のキッカケになれば幸いである。
【クリエイティビティは後天的なもの?】
新しいものを創り出すチカラであるクリエイティビティについて考えた時、「クリエイティビティは育まれるのだろうか?」という問いに、皆さんであればどう答えるだろうか。
一般的には、創造的な行為をしている状態を意味するものではなく、あくまで新しく価値ある何かを生み出した結果を、クリエイティビティと定義していることが多い。要は、思いついたことをしっかりと形にする能力のことを表す。そう話すのは「 BRAIN DRIVEN」の著者である青砥氏である。
これまで、クリエイティビティは天性のもの、生まれ持ったものと考えられてきた。しかし、脳内の複雑なネットワークが解明されるほど、クリエイティビティが後天的に獲得された能力であることが確認されはじめてきているのだ。
神経科学の世界において『クリエイティビティ』はホットトピックとなっている。
2010年以降に発表された論文本数が急激に伸びているのだ。
クリエイティビティは神経科学の分野でも非常に対象が難しい分野であったが、近年になってようやく様々なことが明らかになりはじめた。その結果、研究対象とする科学者が増えはじめたのである。
とはいえ、まだ年間で100本ほどの論文本数であり、「モチベーション」と検索した場合では「クリエイティビティ」の9倍から10倍の論文がヒットすることになる。
クリエイティビティを研究する科学者の絶対数はまだ多くないものの、勢いがつきはじめているホットトピックであるといえる。
【幾つもの脳機能と複雑に関連する】
2016年に発表された論文において、クリエイティビティについて面白いことが記載されている。
あるピアニストに異なる指示をしてピアノを弾いてもらった時の、脳の状態を研究したものだ。
A群は楽譜通りに弾いてもらった時、つまりピアノの銀盤を意識して弾いてもらっている様子がイメージできるだろう。反対にB群は、楽譜通りに弾くというより、むしろ「悲しみや喜びなどの特定の感情を表現すること」を意識して弾いてもらった。
同じピアノを同じ曲で弾くとしても、意識の仕方によって、もっといえば「心を込めたかどうか」によって使われる脳のあり方は異なるか、が研究されたのである。
結果は、使われる脳の領域に大きな違いが出たのである。
ということは、同じピアニストが同じピアノを弾いても、決められた曲を決められた通り弾いている時と、何らかのクリエイティビティな操作をしている時では、使われている脳の部位は違うということである。
モチベーションを高めるには脳の報酬系と呼ばれる仕組みを中心に様々なシステムと関連していることが分かっているが、クリエイティビティは多岐にわたる脳の部位それぞれが時間と共に使われる中心を変遷させながら、他のシステムと複雑に関連して機能している。
こうしたことから、クリエイティビティはどこか抽象的で捉えどころがないと思われ、先天的なものと考えられてきた軌跡がある。
しかし、一見すると同じに見える行為であっても、クリエイティビティを発揮しているかそうでないかで、脳の使われ方の違いも見えたきた。そうなれば、偶発的に捉えられていたものを「クリエイティビティ能力を発揮する」ための必然として見ることもできるようになる。
クリエイティビティをもたらす脳の仕組みを知ることが、意識的にクリエイティビティを高めるためのヒントにもなるのである。
次回は、脳の本質を理解し、ひらめきを得る方法について述べる。
参考文献
「BRAIN DRIVEN」青砥 瑞人
「脳に悪い7つの習慣」 林 成之
「アウトプット大全」 樺沢 紫苑