【MFA健康コラムVol.88】ストレスへの理解 その1
「ストレス」と聞けば、どのようなイメージが膨らむだろうか?
ネガティブに捉えるのが普通なのかもしれないし、人によってはストレスは「良いもの」だと解釈することもあるだろう。
現代社会は多くの情報が飛び交い、そしてインプットすることが多いわけであるが故に、ストレスを受けやすく感じやすいのも現状である。そのストレスに対してどのように向き合えば良いだろうか?
一つの参考として記事を読み進めていただきたい。
【発散することの意味】
皆さんはストレスを抱えた時に、発散をするだろうか?
ラットにストレス環境時に箸に噛み付かせるという実験を行った結果、噛み付かせること(発散)したラットでは、その行為が怒りを表出することになり視床下部や扁桃体といったストレスと最も関係する脳の部位のノルアドレナリン放出にも大きな影響を与えるだけでなく、ストレスの最も敏感な指標である血漿中の副腎皮質ホルモン含量に大きな影響を与えることが分かったようである。また、発散できるかどうかは、胃潰瘍の形成にも関係していたようである。
同じストレスに晒されたにも関わらず、怒りを表出できたかどうか、つまり発散できたかどうかで、脳のノルアドレナリン放出の亢進の程度や副腎皮質ホルモンの分泌亢進に程度、胃潰瘍の発生の程度などに大きな違いが生じることが明らかになったのである。
この結果は、私たちでもストレス状況ではうまく発散できた方が良いこと、もう少しいえばストレス状況で怒りをきっちり出すこと、一方的に言われるのではなく、反論することなども、時と場合によっては必要であることを示しているのかもしれない。
【予測できるストレス、予測できないストレス】
皆さんは、どちらのパターンでよりストレスを感じるだろうか?
私たちの生活では突然襲ってくる悲しい出来事や、ある程度覚悟していた悲しい・辛い出来事がある。
ある程度予測できるストレスと、全く予測できないストレスを、前述した”ストレス発散”と同じくラットの実験で検討したものがある。
結果は、あるストレスに必ず晒されるとするならば、突然それに晒されるよりは”予測できた方がよい”と言える結果が出たのである。
不安定な時代だからこそ未来を見通すには難しいのかもしれないが、ある程度の予測を立てることでストレスへの順応を準備することと、どのような状況のストレスであってもまずは受け入れるくらいのスタンスが大切なのかもしれない。
次回は自分にとってのストレスとは?気づくサインとは?について、お伝えしたい。
参考文献
田中正 敏「ストレスの脳科学」講談社,2017
青砥 瑞人「ブレインドリブン」ディスカヴァー・トゥエンティワン,2020
【vol.83】ウォーキングを指導する上でのポイント その1