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【MFA健康コラムVol.137】「フレイル予防の第一歩」― “最近弱ってきた”を見逃さない ―

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【MFA健康コラムVol.137】「フレイル予防の第一歩」― “最近弱ってきた”を見逃さない ―

朝晩の空気がひんやりとし、虫の音が静けさを運んでくる十月。過ごしやすい気候は外出や運動を始めるのに絶好の季節ですが、同時に「急に寒くなって外出が億劫になった」「夏バテの疲れがまだ抜けない」という声も聞かれる時期です。とくに高齢のご家族がいる方にとっては、「最近、歩くのが遅くなった気がする」「以前より痩せてきたかも」——そんな小さな変化に気づく瞬間があるかもしれません。

 

これまで本コラムでは、呼吸・姿勢・体幹、そしてジュニア期やアスリートのケガ予防について取り上げてきました。

今月は少し対象を広げ、高齢期における"弱り"のサイン、すなわちフレイルをテーマにお届けします。

 

 

 

「年だから仕方ない」「少し疲れやすくなっただけ」加齢に伴う変化は、しばしばこのように片付けられがちです。しかし、この「なんとなく弱ってきた」という感覚の背景には、フレイル(Frailty:虚弱)と呼ばれる、医学的に定義された状態が隠れている場合があります。

フレイルの厄介な点は、自立した生活と要介護状態の中間に位置する「可逆的な段階」であるにもかかわらず、本人も家族も単なる老化現象として見過ごしてしまいやすいことです。「体重が少し減った」「疲れやすい」「歩くのが遅くなった」これらのサインを早期に捉えられるかどうかが、その後の生活の質を大きく左右します。

 

フレイルの概念を国際的に確立したのが、Fried らによる「フレイル・フェノタイプ(Frailty Phenotype)」です。これは2001年に発表された研究であり、5つの身体的基準——①意図しない体重減少、②疲労感・倦怠感、③身体活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の低下(筋力低下)——によってフレイルを定義しています。これら5項目のうち、3項目以上に該当すれば「フレイル」、1〜2項目であれば「プレフレイル(前虚弱)」と判定されます。

このフェノタイプが重要視される理由は、フレイルが単なる老化の結果ではなく、「エネルギー代謝の調節不全によって生じる、動き・疲労・筋力低下が連鎖する症候群」として捉えられている点にあります。体重減少によって筋量が落ち、筋力が低下することで活動量が減り、さらに消費エネルギーが減って栄養状態が悪化する——このような悪循環が、フレイルの進行メカニズムとして想定されています。

 

 

 

フレイルを放置することの問題は深刻です。実際に、フレイルの状態にある高齢者は、そうでない高齢者と比較して、社会的・心理的・身体的機能のいずれにおいても有意な低下が認められることが、大規模な横断研究によって示されています。フレイルは将来の転倒、入院、要介護化、そして死亡リスクの増加とも関連することが各国の研究で繰り返し報告されており、早期発見・早期介入の重要性が国際的なコンセンサスとなっています。

一方で、フレイルの朗報とも言えるのが、「可逆性」です。プレフレイルやフレイルの段階であれば、適切な運動介入によって状態が改善、あるいは健常な状態に戻る可能性があることが、複数の系統的レビューで示されています。特に有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせた介入は、フレイル高齢者においても身体機能の改善に寄与する可能性があることが報告されています。つまりフレイルは、「年だから仕方ない」とあきらめるべき状態ではなく、気づいた時点から対処できる、予防可能な状態なのです。

 

 

 

フレイルの進行を防ぎ、改善を目指すための実践ポイントを3つ紹介します。いずれもご本人だけでなく、ご家族が一緒に取り組める内容です。

 

【1】5つのサインをセルフチェックする

以下のような変化が複数当てはまる場合は、注意のサインです。

  • この半年〜1年で、特に意図せず体重が減った
  • わけもなく疲れやすい、何をするにも億劫に感じる
  • 外出や散歩の頻度が明らかに減った
  • 横断歩道を青信号のうちに渡りきれないことがある
  • ペットボトルの蓋を開けづらくなった(握力の低下)

これらは特別な検査がなくても、日常の中で気づけるサインです。「年のせい」で片付けず、複数当てはまる場合は医療機関や地域包括支援センターへの相談を検討しましょう。

 

【2】歩く習慣を"少しだけ"増やす

いきなり本格的な運動を始める必要はありません。1日10分のウォーキングを週3回から始めるだけでも、活動量の底上げにつながります。近所を一周する、買い物に歩いて行くなど、生活の中に組み込める形が長続きのコツです。

 

【3】タンパク質を意識した食事と、簡単な筋力トレーニング

体重減少や筋力低下を防ぐには、運動と並行してタンパク質を意識した食事(肉・魚・卵・大豆製品など)を摂ることが大切です。あわせて、椅子に座ったまま行えるかかと上げ運動や、壁を使ったスクワットなど、道具を使わない簡単な筋力トレーニングを1日5分から取り入れてみましょう。

 

 

 

 

「最近、少し弱ってきたかもしれない」——その小さな気づきこそが、フレイル予防の第一歩です。フレイルは一方的に進行するものではなく、早期に気づき、行動を変えることで改善が見込める状態です。

十月の澄んだ空気の中、まずは「今日は少し長めに歩いてみよう」という小さな一歩から始めてみませんか。それが、これからも自分らしく動き続けられる体への、確かな投資になります。

 

 

 

参考文献

  • Fried LP, Tangen CM, Walston J, Newman AB, Hirsch C, Gottdiener J, Seeman T, Tracy R, Kop WJ, Burke G, McBurnie MA; Cardiovascular Health Study Collaborative Research Group. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2001;56(3):M146-M156. doi:10.1093/gerona/56.3.M146. PMID: 11253156
  • Op het Veld LPM, van Rossum E, Kempen GIJM, de Vet HCW, Hajema KJ, Beurskens AJHM. Fried phenotype of frailty: cross-sectional comparison of three frailty stages on various health domains. BMC Geriatr.2015;15:77. PMID: 26155837
  • Theou O, Stathokostas L, Roland KP, Jakobi JM, Patterson C, Vandervoort AA, Jones GR. The effectiveness of exercise interventions for the management of frailty: a systematic review. J Aging Res.2011 Apr 4;2011:569194. doi:10.4061/2011/569194. PMID: 21584244
  • de Labra C, Guimaraes-Pinheiro C, Maseda A, Lorenzo T, Millán-Calenti JC. Effects of physical exercise interventions in frail older adults: a systematic review of randomized controlled trials. BMC Geriatr.2015;15:154. doi:10.1186/s12877-015-0155-4. PMID: 26626157
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