【MFA健康コラムVol.126】「歩く」を問い直してみよう
毎日何気なく歩いているけれど、「自分の歩き方ってどうなんだろう?」と立ち止まって考えることは、意外と少ない。実際は、スマホを見ながら歩いたり、急ぎ足で前のめりになったり、知らず知らずのうちに身体へ負担をかけている人も多いのが現実。
“歩くこと”は移動のためだけではなく、自分を整えるための行為にもなる。だからこそ、今一度「正しく、美しく歩くこと」の価値を見直してみてもいいかもしれない。
【歩き方は”性格”を映す鏡】
歩き方には、その人のリズムや姿勢、さらには思考や感情までもが映し出される。
胸を張って大股で歩く人は自信に満ち、内股でうつむき加減の人は、内向的な傾向があるとも言われている。つまり、歩き方はただの“移動手段”ではなく、その人の“在り方”そのものでもあるのだ。
歩く姿勢を変えることで、気分や印象が変わることを実感したことがある人も多いはず。
逆に、無意識の歩き方が習慣になってしまっている場合、自分の本来の力を発揮できていない可能性もある。
【正しい歩き方は”健康の設計図”になる】
一歩ごとに骨盤が動き、背骨がしなり、肩甲骨も連動する。
歩行は、全身を使った“最も自然な運動”だ。ただし、この「自然な動き」ができていない人が多く、反り腰・巻き肩・膝痛・腰痛など、姿勢不良によるトラブルは尽きない。
そうならない為にも、「正しい歩行フォーム」を身につけることで、こうした慢性不調が予防・改善されるというわけだ。
肩の力を抜き、足の裏全体を使って前に進むような意識。
リズム・姿勢・軸を見直すことで、身体全体の調和が取れ始めるのである。
【体力とメンタルの土台も歩くことにある】
ウォーキングは有酸素運動としての側面だけでなく、自律神経やホルモンバランスにもポジティブな影響を与える。適度なスピードと呼吸を保ちながら歩くことで、ストレスホルモンの抑制や、セロトニン分泌の促進が期待できる。
また、「歩くことで頭がスッキリする」「前向きな気分になる」と感じたことはないだろうか?
それは、歩行中の前庭系刺激や全身運動によって、脳の可塑性が高まり、思考の整理や創造性にも良い影響があるからだ。
つまり、歩くことは“心と頭を整えるスイッチ”でもあるのだ。
【習慣として歩く力を育てよう】
週に1回のウォーキングではなく、1日数分でも「毎日歩く」ことのほうが、身体と心にとって圧倒的に効果的である。何気ない動作の連続が、その恩恵に繋がるのだ。その上で、“習慣化”こそが最大のポイントになる。
ただし、気合いを入れて歩き過ぎる必要はない。少しのことを、小さくはじめることがポイントである。
例えば、
・朝の通勤を一駅分だけ歩く
・昼休みに5分だけ外に出る
・お気に入りの音楽を聴きながら歩く
こうした“小さな工夫”の積み重ねが、歩き方を自然と整え、無理なく生活に取り入れていくコツになるのである。
歩くことは本来、誰もができる基本的な行為である。そして場所や時間に制約されることも少ない。
歩くという基本を丁寧に整えることは、自分の身体と心の土台を整えることでもあるのだ。
万が一、自分の歩き方が正しいのかがわからない時は、専門家の助言を受けることも良いだろう。きっと、自分では気づくことが出来なかった課題を抽出してくれるはずだ。
そして、正しい歩き方を手に入れることで、姿勢・呼吸・思考など思わぬ効果に繋がるかもしれない。
何かを変えたいとき、まずは“歩き方を変えてみる”。そんな選択肢があっても良いのではないだろうか。
季節は10月。スポーツの秋 真っ盛りである。歩くことを意識するキッカケになれば幸いである。
参考文献
小林 寛道「東大式 世界一美しく正しい歩き方」日本文芸社,2018
田中 尚喜「正しく歩いて、不調を治す。」クロスメディア・パブリッシング,2019
メディカル・フィットネス協会「ウォーキングトレーナー養成テキスト」,2024