【MFA健康コラムVol.36】自分の現在地を知る、その後に その2
【ラテラルとロジカル】
ラテラルシンキングとロジカルシンキングという考え方がある。
下記の状況に対して、皆さんならどのように解決策を考えるであろうか?
『1970年に開催された大阪万博。主催者はある問題に悩まされていました。当時の大阪万博は日本中を巻き込んだ一大イベントでしたから、早く会場に入ろうとする人たちが、開門前から入り口に押し寄せました。入場時間になってゲートが開くと、来場者たちは人気のパビリオンに向かって一斉に走り出します。ところが、人の数に比べて入口付近のスペースが極端に狭くなっている為、急いでいる人同士がぶつかって大変危険でした。』
上記のようなケースにおいて、皆さんが警備責任者だとしたらどのような解決策を考えるだろうか。
ロジカルシンキングで考えるとするならば、「警備員を増員する」「ゲートを大きくする」「入場者の制限するための柵を作る」というプランが出てくる。
しかし、実際にこの問題の解決策は全く違った方法であったそうだ。要するに、「入場者が走らないようにすれば良い」のである。
主催者がとった解決策は、入場を待っている人たちに小さな会場案内図を配ったのである。走りながらでは、文字は読めないわけであって、急ぐ人はずいぶん減ったそうだ。
これはいわば、ラテラルシンキング的な解決策である。
【両者の相互補完】
水平思考とは、1967年にイギリス人の医師であるエドワード・デボノが提唱した思考法で、別名「ラテラル」あるいは「ラテラル思考」とも呼ばれる。
エドワード・デボノの定義によれば、水平思考とは「どんな前提条件にも支配されない自由な思考法」であり「水平方向に発想を広げる」という意味合いから「水平(ラテラル)」という言葉が使われる。
水平思考と論理的思考(ロジカルシンキング)は、2つをうまく組み合わせることができれば「より広く」「深い」発想ができるようになる。なぜなら水平思考と論理的思考は、対立する思考法ではなく相互補完的な思考法だからだ。
日本では少子高齢化が進み、多くの市場は成熟化しているため、これまでとは異なる新たなアイデアやイノベーションを生み出すことが必要だ。その際に既成概念に囚われず、前提そのものを覆す発想を広げていく水平思考は必要不可欠な思考方法となる。
しかし、ただ単に「発想を広げる」だけでは「思い付きの羅列」でしかない。
もし、あなたがビジネスの成果を追い求めるのであれば、水平思考で得られた新たな「前提」を元に「推論」を働かせ、成果が得られそうだという結論に辿り着く「検証」が必要となる。その際に役に立つのが論理的思考だ。
巷の書籍では、あたかも「ラテラルシンキング」と「ロジカルシンキング」は対立している思考法であるかのように語られるが、ビジネス上の成果を目指すのであれば、この両者を「補完関係」として位置付けたほうが実践的だ。
もちろん、この水平思考と論理的思考の関係はビジネス上の問題に限った話ではない。
昨年から続くコロナ感染拡大による不安定な状況と、それに伴う変化の多い時代の中において、「今を生き抜く知恵」を考える際に、まずは自由な発想を持ちラテラル思考で沢山の選択肢や解決策を考えてみる。その後に、実際に取組みが実行に移せるのかを考えてロジカルに行動に起こしてみるのも、1つの生き抜き方になるのではないだろうか。
冒頭にも述べたが、上記の「思考法」は、記事をご覧の皆さんの目の前にある「問題」を、最短ルートで解決する方法ではない。
記事の中で取り上げた思考法以外にも問題を解決する思考法は沢山ある。クリティカルシンキング、コンテキスト思考、アナロジー思考、分析思考、概念化思考、など。どれが正攻法かはその人・環境によって左右されるが、これらを知識として、そして経験として集積しておくことのメリットは、大いにあるかもしれない。
あくまで参考に、一つの意見として最後までお読み頂いたことに感謝する。
参考書籍
「ずるい考え方」 木村 尚義
【MFA健康コラムVol.27】チャレンジの仕組みを紐解く その1
【MFA健康コラムVol.28】チャレンジの仕組みを紐解く その2
【MFA健康コラムVol.31】ストレスの向き合い方 その1
【MFA健康コラムVol.32】ストレスの向き合い方 その2
【MFA健康コラムVol.33】吐き出すことで起こる変化 その1