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【MFA健康コラムVol.23】歩くことで得られる効果

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MFAオフィシャル健康コラム

【MFA健康コラムVol.23】歩くことで得られる効果

~歩くことで得られる効果~

 

◇歩きながら哲学を探究した者たち

フランス革命の父とされる哲学者ジャン=ジャック・ルソーは「告白」でこう書いている。

「私が集中できるのは歩いている時だけだ。立ち止まると考えは止まる。私の精神は足をともなう時だけに働くようだ。」

歩きながら哲学を唱えた者を逍遥学派という表現をした過去があり、ルソー以外にも沢山の哲学者が歩くことでその思考を深めていった。その「歩くこと」で得られる効果は今日に至ってはエビデンスとして多く出てきている。その幾つかを紹介したい。

*逍遥=気ままにぶらぶらと歩くこと。

 

 

◇1日の歩数 今昔

日本の歴史を見ると、幕末の八丁堀同心の記録には御家人の場合でも、1日に100キロ程度は歩くことができたようである。武士のみならず、商人でもたいていの商人は1万歩、庶民は3万歩は歩いたと言われる。

当時の歩幅は着物の関係で、商人で50センチ、庶民でも60〜70センチ程度。ということは、商人で5キロ、庶民に至っては18〜21キロは毎日歩いていたことになる。

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現代の調査で比べると、30年前のサラリーマンで1日7000歩、距離にして4キロ程度。それが今日に至っては自動車や地下鉄の整備普及により、電車通勤のサラリーマンで平均5800歩、OLは5400歩、マイカー通勤では3600歩と、減少の一途である。

 

コロナにより3密を避けることが必要となり、リモートワークが増え、勤務時間短縮や自粛によって時間が出来たことで運動習慣が定着した人もいるだろう。しかし、同時に圧倒的に歩く習慣がなくなってしまった人もいるのではないだろうか。「歩けば歩くほど良い」という訳ではないが、それでも歩くことでの効果やエビデンスは沢山ある。その方法と効果を後述する。

 

 

◇ウォーキングと死亡リスクの大規模実験

米国がん学会が実施しているコホート研究「がん予防研究-3」(CPS-3)に13万9,255人(男性 6万2,178人、女性 7万7,077人)を対象とした研究がある。

参加者のおよそ95%はなんらかのウォーキングをしており、半数の人はウォーキングが中強度から活発な運動の唯一の手段であると回答し、男性の5.8%、女性の6.6%はそうした運動をまったく行っていないと回答した。

1999~2012年の13年間の追跡期間中に、男性2万4,688人、女性1万8,933人が死亡した。

週に2時間未満のウォーキングを行っている群と比べると、まったく運動をししない群では、死亡リスクが26%上昇し、さらに、対照群の2倍にあたる週に2.5~5時間のウォーキングをしていた群では、全死亡のリスクが20%低下した。

調査では、ガイドラインで推奨されているレベルを下回るウォーキングであっても、死亡リスクを低下できることが判明した。

また、ウォーキングを習慣として行うことで、心疾患による死亡リスクが20%低下し、がんによる死亡リスクが9%低下することも判明した。

ウォーキングの効果がもっとも高いのは肺炎やインフルエンザなど呼吸器に関連する疾患であり、高齢の人が週に6時間のウォーキングをすることで、そうした疾患による死亡リスクは35%低下した。

 

 

◇1日1万歩、歩かなくても大丈夫?

保健指導ではウォーキングの目標として「1日1万歩」をアドバイスされることが多い。しかし、実際に前述した通り、現代の人の歩数は時代の進歩とともに減少傾向にある。

では、実際にどれくらい歩くことでその効果を得られるのか。

座ったまま過ごす時間をなるべく減らして、ウォーキングの速度を上げて、「活発なウォーキング」を1日に3,000歩行うだけでも、血圧値や血糖値を下げられ、コレステロール値も低下し、肥満を解消できるという研究が発表された。

推奨以下のレベルのウォーキングであっても、習慣として続ければ、死亡率が低下し、健康に生きるために役立つことが、米国がん学会が実施した14万人対象の研究で明らかになった。

「ウォーキングは自由に、簡単に行える、もっとも実践的な運動です。もっともリスクが高いのは、運動をまったく行わないことです。時間がないので運動できないという言い訳は通用しません。」と、研究者は述べている。

 

 

◇推奨より少なくても効果があるという報告

一方で、「ウォーキングの速度が1分あたり100歩」を1日に30分維持している人でも、歩数の合計が1日1万歩に達していない場合でも、検査値が良好であることも分かった。

「運動は、しないでいるよりも、した方が良いことは多くの方が認知しています。しかし、1日にまとまった運動の時間をとるのは、なかなか難しいものです。そうした人でも、ふだんのウォーキングの速度を少し上げただけでも健康効果を得られます。」と、米国のオレゴン州立大学公衆衛生・人間科学部のジョン シューナ氏は言う。

 

「1分あたり100歩の活発なウォーキングを1日3,000歩」という目標は、多くの人にとって取り組みやすい。3,000歩のウォーキングが体力的に無理な場合は、10分間のウォーキングでも良いという。10分間の運動であっても、回数を重ねることで運動による恩恵を得ることができる。

 

ウォーキングは、もっとも広く行われている運動であり、2型糖尿病、心臓病、がんなどのリスクを低下させることが、過去の研究で明らかになっている。

米国がん学会は、中強度の運動を週に150分、あるいは活発な運動を週に75分行うことを奨励している。中強度の運動とは時速4.8km程度のウォーキングに相当し、活発な運動とは心拍数が上昇し、呼吸が速くなり、うっすらと汗をかく程度の運動に相当することになる。

 

 

ウォーキングがもたらす効能は、病気の予防や改善だけではない。次回はその効果を「心」にも目を向けてお伝えしようと思う。

 

 

参考文献

「ウォークス〜歩くことの精神史〜」レベッカ・ソルニット

「散歩学のすすめ」吉川愛哲

日本生活習慣病予防協会HPhttp://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2017/009496.php-- 

 

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