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【MFA健康コラムVol.7】転倒予防における課題と現状

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MFAオフィシャル健康コラム

【MFA健康コラムVol.7】転倒予防における課題と現状

健康寿命の延伸のためにいかに転倒を予防するかが課題!!

 

厚生労働省の調査によると、要介護状態になる原因の第1位が脳血管疾患、第2位が認知症、第3位が高齢による衰弱、第4位が骨折・転倒となっています。

その中でも骨折は近年急激に増加しており、骨折後の約50%は機能的予防の悪化をもたらし、そのうちの約26%が歩行不能になると報告されています。

また、骨折の原因の4分の3がつまずき、転び、滑りなどの転倒に由来し、骨折の34.1%が寝たきり生活を送っているなどの現状があるのです。

 

 

 

平成30年国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフでみる世帯の状況
要介護者の介護が必要となった主な原因と割合

 

 

 

◆高齢者の転倒の発生状況

高齢者が転倒し、救急搬送されている割合は平成25年から増加傾向にあり、「ころぶ」事故が全体の約8割を占めている状況です。

 

 

65歳以上の高齢者が転倒する場所は、自宅など居住場所が多くなっています。

その内訳は、居室・寝室が最も多いとされており、次いで玄関・勝手口、廊下・縁側となっています。

 

事例としては、自宅で敷物に足を取られ転倒した、自宅で掃除中、掃除機のホースにつまずき転倒したなど、つまずいて転ぶことによる受傷が最も多くなっています。また、転倒した高齢者のうち、生命に危険はないが入院を要するような中等症の患者は約4割以上となっているのです。

 

このようなことから、転倒を防止するためにカーペットや畳の縁、段差などの解消で転びにくい環境整備の工夫も重要となってきます。

 

 

 

◆転倒の要因

転倒の要因には、身体的機能(感覚要因など)による内的因子と外部を取り巻く環境要因による外的因子に分類することができます。

 

●内的要因

加齢に伴い、人の身体は形態的にも機能的にも変化し、構造的・生理学的に減衰していき、その変化の50%は、不活動によるものであると指摘されています。

身体活動を質的にも量的にも高めることが、様々な病気・障害の予防のために重要なのです。

下記のように様々な加齢変化が発生します。


【感覚系の加齢変化】

微細な操作機能が低下し、歩行やバランス機能に大きく影響します。


【視覚系の加齢変化】

視力低下は、夜間移動する場合や部屋の明るさにより、段差の見落としや環境把握に支障を来たし、転倒の要因となります。

 

【神経系の加齢変化】

短期記憶の低下や中枢での情報処理率の低下による運動活動の遅延、歩行障害などで顕在化します。

 

【骨格筋系の加齢変化】

特に腰椎部の変化が著しいと言われています。底屈筋が背屈筋に比べ選択的に低下傾向にあり、立位バランス機能の低下要因となります。

 

【関節の加齢変化】

日常活動性の低下や運動不足による不動化は、関節可動域の制限や姿勢異常をもたらします。

 

【バランス機能の加齢変化】

バランス機能は、与えられた基底面に対して適性に重心位置をコントロールする能力です。

感覚系、中枢神経系、末梢神経系、筋骨格系が総合的に作用し、環境と適応するために生じる姿勢変化として顕在化します。


【高次神経機能の加齢変化】

高次神経機能とは、認識、学習、記憶、企画、創造、判断、言語など人の精神活動に関する脳の働きです。記憶は短期記憶と長期記憶に大別されますが、さらに長期記憶は意味記憶・エピソード記憶・手続き的記憶に区分され、老化によりエピソード記憶が著しく低下すると言われています。記憶の障害は環境認知や注意低下にも結びつき、転倒の要因となります。

 

 

●外的要因

転倒原因は「つまずく」と「すべる」が主であるため、外的因子への対策も重要となってきます。


【段差】

高齢者の視覚の特徴として

①明暗順応に時間がかかる ②色彩の見え方が変化する ③立体感が捉えにくい

 

段差をなくすことが不可能な場合は、段差を認知しやすいように高くすること(10cm以上)や、

床と段差を色で区別できるような工夫が必要となります。


【床・敷物】

すべりやすい材質は当然避けるべきです。畳においては、畳目に沿ってすべり転倒する事例も多く、畳目に沿わずに歩く習慣など意識する必要があります。 また敷物やカーペットなどは、できるだけ薄めの物を選び、端がめくれないよう完全に固定し、つまずく原因となる障害物(電気コードや新聞紙など)は、動線部分に放置せず整理する配慮が必要となります。


【照明】

明暗順応しやすいよう明るさに調整します。特に夜間においては、高齢者の排尿覚醒や早朝行動開始などの傾向に対して、枕灯やトイレ灯、階段灯などを点灯し認識しやすくします。


【履物】

諸外国に比べて、我が国の転倒が多い要因の一つに、屋外から屋内に入る際の履物を脱ぐ動作が挙げられるます。特にスリッパの場合、足関節の底屈や背屈が困難な高齢者にとっては歩行時に脱げやすく、転倒の危険性が高くなります。踵部を固定できるストラップなどをスリッパに装着する事で、突然の脱げを回避できます。


【その他】

高齢者の場合新しい環境に順応するまで3週間以上かかると言われています。施設や病院などへの入所や入院時、新しい環境での生活を開始する際などは、少なくとも3週間は転倒に対して特に注意が必要です。また、一度慣れた環境を安易に変える(タンスの位置やポータブルトイレの位置など)と混乱を招き、夜間などに転倒の危険性を高めるため十分な配慮が必要です。

 

 

 

◆転倒方向と骨折部位

高齢者が転倒して骨折しやすい部位は、大腿骨頸部骨折、橈骨遠位端骨折、脊椎圧迫骨折、上腕骨骨折の

4つの部位が代表的です。

転倒の方向により骨折部位に偏りがみられ、前方転倒時には、膝の骨折(22.8%)についで手および手関節の骨折(15.4%)が多く、側方転倒では大腿骨の骨折(15.4%)についで足部外側(13.8)となっています。

 

 

 

◆転倒予防における課題と今後の展望

転倒の発生要因には、さまざまな要因があり、統一化できないのが課題です。

転倒予防について、筋力強化、バランストレーニング、太極拳などの介入効果を検討している研究は多数みられますが、単一の介入研究では有効であっても、その他では無効という報告もあり、未だに解明されていないのも現状です。

今後は、対象者によってどれくらいのリスク因子があるのか、どれくらいの身体機能が残存しているかを

分類し、分類別にあわせた対策が必要となってきます。

 

 

 

 

 

今回のコラムは、介護予防運動トレーナー養成講習会で学ぶ「転倒予防理論」の範囲から引用しています。
介護予防運動トレーナー養成講習会では、介護の現場など、高齢者に身近な人が介護や転倒予防などの知識を身に付けて頂ける内容となっています。

 

介護予防運動トレーナーとは
介護予防の基本的知識(認知症・失禁・低栄養・行動科学・マネジメント等)や運動指導に必要な知識・技能(転倒予防・筋力向上トレーニング等)を身につけ、高齢者ができる限り、要介護状態になることなく、健康で生き生きとした老後生活を送れるように安全で効果的な運動プログラムを提供するとともに、高齢者一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組み、生活の質(QOL)の向上を支援するための資格です。

 

介護予防運動トレーナーを取得すると
高齢者に多い、転倒・骨折からの寝たきりを防ぐための転倒予防や、失禁予防のための運動の実践ができます。また、実技実習では、援助者の立場からだけではなく、援助される側の気持ちも体験し、学び今後の実技援助・指導に役立てることができます。そして、市町村における各種教室の指導や老人福祉施設等でも活用することができます。

 


>>介護予防運動トレーナー養成講習会については、
ちらのページで詳しくご覧いただけます。

 

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