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【MFA健康コラムVol.135】「ジュニア期に必要な体づくり」― 成長期と運動の正しい関係―

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MFAオフィシャル健康コラム

【MFA健康コラムVol.135】「ジュニア期に必要な体づくり」― 成長期と運動の正しい関係―

夏本番を迎える七月。学校は夏休みに入り、部活動の合宿や大会、地域のスポーツクラブの強化期間など、子どもたちが運動に費やす時間が一気に増える季節です。

「この夏で一気にレベルアップしてほしい」「休まず練習させたほうが上達が早い」——そう考える保護者や指導者の方も多いのではないでしょうか。

 

4月から6月まで、私たちは大人の体における「呼吸」「姿勢」「体幹」をテーマにお伝えしてきました。

今月は少し視点を変え、成長期にあるジュニアアスリートの体づくりに焦点を当てます。

大人と同じ理論で語れない、子どもの体に特有のメカニズムを理解することが、夏の指導において欠かせない視点となります。

 

 

 

 

「最近、膝の下が痛いと言い出した」「練習を休むと体力が落ちそうで不安」ジュニアスポーツの現場では、こうした声がよく聞かれます。とくに身長が急激に伸びる時期、いわゆる成長スパートの最中は、ケガが増えやすいことが知られています。

問題は、この時期のケガの多くが、一度の衝撃で起こる「外傷」ではなく、繰り返しの負荷によって徐々に進行する「オーバーユース(使いすぎ)障害」だという点です。痛みが軽いうちは「成長痛だろう」と見過ごされがちですが、その背景には、成長期特有の骨と筋肉のアンバランスが潜んでいます。

さらに近年は、一つの競技に早期から専念する早期専門化(early sports specialization)も増えており、これがケガのリスクをさらに高める要因として注目されています。

 

成長期の骨には、成長軟骨(growth cartilage)と呼ばれる、大人にはない特殊な組織が存在します。これは骨端線(成長板)・関節面・腱や靱帯の付着部である「裂離部(apophysis)」の3カ所に存在し、いずれも力学的なストレスに対して脆弱です。

身長が最も急速に伸びるPHV(Peak Height Velocity:身長最大発育速度)の時期には、これらの成長軟骨への負荷が集中しやすく、スポーツ傷害のリスクが特に高まることが報告されています。成長期のスポーツ傷害の発生には、未成熟な骨格の成長特性が関与している可能性があります。 

 

 

 

実際に、思春期サッカー選手を対象とした系統的レビューでは、PHVの時期(女子で平均11.5歳、男子で平均13.5歳)が一貫してケガのハイリスク期間として確認され、複数の研究でこの時期にオーバーユース障害の発生率が有意に高いことが示されています。

この時期は骨の伸長速度に筋肉や腱の柔軟性の発達が追いつかず、関節をまたぐ筋肉の柔軟性低下がケガの一因となります。 

 

加えて見過ごせないのが、早期専門化と燃え尽き(burnout)のリスクです。

国際オリンピック委員会(IOC)の合意声明では、不十分な睡眠、オーバーユース障害の増加、オーバートレーニング、燃え尽き、摂食障害といった、ジュニアアスリートの才能育成に伴う身体的・精神的な健康上の懸念が指摘されており、思春期に達するまでは特定競技への専門化を避け、多様な活動への参加が推奨されています。

また、週あたりの練習時間が年齢を超える、あるいは週16時間を超える高強度トレーニングを行っている選手は、燃え尽きやオーバーユース障害、パフォーマンス低下の兆候について注意深く観察される必要があると指摘されています。 

さらに、思春期女子アスリートを対象とした研究では、早期のスポーツ専門化が、膝蓋大腿疼痛症候群やオスグッド・シュラッター病といった膝前部痛の発生リスク増加と関連していることが示されています。

これらの知見は、「早くから一つの競技に絞り、長時間練習させること」が、必ずしも将来の競技力向上につながらないばかりか、健康リスクを高める可能性があることを示唆しています。 

 

 

成長期の子どもの体を守りながら能力を伸ばすために、現場で実践できるポイントを3つ紹介します。

 

1】トレーニング量の「見える化」

週の練習時間が「年齢を超えていないか」を一つの目安にしましょう。たとえば12歳であれば週12時間以内が一つの参考基準です。

合宿や大会が重なる夏休みは特に練習量が増えやすいため、週単位で休養日を必ず確保し、オーバートレーニングの兆候(睡眠の乱れ、慢性的な疲労感、パフォーマンスの伸び悩み)がないか、保護者・指導者の双方で観察する習慣を持ちましょう。

 

2】複数競技・多様な動きの経験(サンプリング)

一つの競技に偏らず、様々な動きを経験する「スポーツサンプリング」は、特定部位への偏った負荷を避け、多様な筋力・神経系の発達を促します。IOCの提言でも、思春期に達するまでは複数競技への参加が推奨されています³

夏休み中も、専門競技以外の遊びや運動を取り入れる時間を意識的に確保することが望ましいでしょう。

 

3】成長期特有のサインを見逃さない

膝下(脛骨粗面)の痛み、踵の痛み、股関節周辺の張りなど、骨の成長部位に近い痛みは「成長痛」として片付けず、早めに専門家へ相談することが重要です。

痛みが軽度でも繰り返す場合は、練習量や柔軟性の評価を行うタイミングのサインと捉えましょう。

 

 

 

 

「たくさん練習すれば、その分強くなる」この考え方は、成長期の体には必ずしも当てはまりません。骨や筋肉が大きく変化するこの時期だからこそ、量より質、専門化より多様性という視点が、長期的な成長と競技力向上の土台になります。

 

夏の暑さの中、つい「頑張れ」と励ましたくなる場面も多いでしょう。しかしジュニア期に本当に必要なのは、無理な追い込みではなく、体の声に耳を傾ける習慣です。

今年の夏は、休養日をカレンダーに書き込むことから始めてみませんか。

 

 

参考文献

  • Maffulli N, Pintore E. Welfare of children in competitive sports. Br J Sports Med.1990;24(4):232–235.
  • Ayoub A, Ranger M, Longmire M, Bovid K. Adolescent Soccer Overuse Injuries: A Review of Epidemiology, Risk Factors, and Management. Int J Environ Res Public Health.2025;22(9):1388.
  • DiFiori JP, Benjamin HJ, Brenner JS, Gregory A, Jayanthi N, Landry GL, Luke A. Overuse injuries and burnout in youth sports: a position statement from the American Medical Society for Sports Medicine. Br J Sports Med.2014;48(4):287–288. doi:10.1136/bjsports-2013-093299
  • Hall R, Barber Foss K, Hewett TE, Myer GD. Sport specialization's association with an increased risk of developing anterior knee pain in adolescent female athletes. J Sport Rehabil.2015;24(1):31–35.

     

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