【MFA健康コラムVol.129】2月は「足す養生」より「減らす養生」
寒さが続く2月は、体がこわばりやすく、疲れも抜けにくい季節である。
年度末が近づき、気持ちの面でも無意識に力が入りやすく、「何かを足して乗り切ろう」としてしまいがちだ。しかし、養生という視点で見たとき、この時期に大切になるのは、頑張りを重ねることよりも、日常の整え方そのものを見直すことである。
【東洋医学の考え方】
東洋医学では、体だけを切り取って考えるのではなく、心や生活環境も含めて人を捉え、バランスの乱れを整えていくという考え方が基本にある。
同じ症状であっても、その人の状態や生活背景によって対応が変わるのも特徴であり、「病名」よりも「その人の状態」を重視する医学である。
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また、東洋医学は西洋医学と対立するものではなく、近年では互いの強みを生かしながら組み合わせていく医療として整理されている。
個人差が大きく、条件をそろえにくいため、同じ方法で検証することが難しい側面はあるものの、鍼や漢方などに関する臨床研究は世界的に増えており、どのような人に、どのような条件で効果が現れるのかが、少しずつ明らかになってきている。
東洋医学が大切にしているのは、特別な治療よりも、「日常をどう整えるか」という視点なのである。
【疲れない生活の土台は、選択と集中にある】
人はもともと欲張りな生き物である。
あれもやりたい、これも手に入れたい、素敵なものに刺激されること自体は、決して悪いことではない。
しかし、毎日時間に追われ、情報にあふれた環境の中では、取捨選択の力がとても重要になる。
誰であっても、無限の体力、無限の時間、無限の財力を持つことはできない。
年齢を重ねるほど、何でもかんでも飛びつくのではなく、「これと決めたもの」や「本当に得たいもの」に注力していく必要がある。
特に四十歳を過ぎたあたりからは、憧れを増やすよりも、憧れを形にしていくための選択が大切になってくる。
いろいろなことをやることがストレス解消になる人もいるが、基本は、選択と集中を意識して行動することが、疲れない生活につながる。
余計なものを切り捨て、本当に大切なことにエネルギーを向けること自体が、体と心を守る養生なのである。
【お風呂から整える】
日々の疲れをリセットする、最も身近で効果的な養生のひとつが入浴である。お風呂に入ることで全身の血行がよくなり、適度に汗をかき、体の巡りが整っていく。日常の中で取り入れやすい、非常に優れた養生の時間といえる。
実際、シャワーだけの生活をしている人のほうが、疲れが抜けにくいケースは少なくない。
湯船につかる生活を一週間続けるだけで、体調が改善する人も多くみられる。入浴の直後は脳への血流が増え、脳の活動が活性化する。
その後、二〜三時間ほど経つと脳は沈静し、自然と入眠しやすい状態になる。そのため、入浴は就寝予定の二〜三時間前までに済ませておくのがひとつの目安となる。

短時間で入浴する場合は、四十〜四十二度程度のやや熱めのお湯が適している。
長湯が苦手な人や、体力が落ちてきた人ほど、短時間入浴のほうが体への負担は少ない。入浴は軽い運動に近い働きがあり、体のリズムを整える助けにもなる。
一方で、二月のような寒い時期は、脱衣室や浴室と浴槽の温度差による急激な血圧変動にも注意が必要である。
脱衣室をあらかじめ温めておく、浴室に打たせ湯をして空間を温めるなどの工夫は、体への負担を減らすうえで非常に有効である。冬は「やや熱め・短時間」の入浴を基本に、無理のない形で続けていきたい。
東洋医学が重視してきたのは、特別な治療法ではなく、その人の日常そのものを整えることである。
二月は、何かを足して乗り切るのではなく、やることを減らし、選ぶ数を減らし、本当に必要な行動に集中する時期にしてみたい。
減らす養生と、整える養生を組み合わせながら、寒さの残るこの季節を、疲れをためずに過ごしていこう。
参考文献
山本 高穂・大野 智「東洋医学はなぜ効くのか」講談社,2024
鈴木 知世「100歳で元気!をめざす 東洋医学式 カラダとココロの養生術」すばる舎,2020


