【MFA健康コラムVOL.12】身体活動を高めるための取り組み
日本を含め、世界の誰もが「身体を動かさない事は健康に悪い。」と知っていても、積極的な身体活動量の増加に繋がっていないのが現状です。
WHOは2018年に「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」と、支援ツールとなる「ACTIVE:身体活動を高めるためのテクニカルガイド」を発表しました。
「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」と「ACTIVE:身体活動を高めるためのテクニカルガイド」は、地域社会や環境、自治体や国の政策等、多岐にわたった対策が必要とされています。
■身体不活動は世界的な健康課題
時代の変化と共に私たちの生活は便利になる一方で、身体活動の機会を減らしてしまったと言われています。
WHOは、生活習慣の改善によって予防が可能な疾患を「非感染症疾患(NCDs)」と定義しました。NCDsの増加は、世界各国共通の健康課題となっています。
■これまでの取り組み
・2010年5月 カナダ トロント【第3回 国際身体活動公衆衛生会議】において、世界規模で身体活動を促進するための行動を呼びかける「 トロント憲章 」が採択されました。
・2012年7月 「THE LANCET」(世界トップの医学ジャーナルのひとつ)において、身体活動の特集が組まれました。その内容は、世界中の死亡の9.4%は、身体不活動が原因であり、その影響は喫煙や肥満に匹敵すること、世界中の成人33%、子どもの80%が十分な身体活動を行っていない実態が報告されるという衝撃的なものでした。
・2016年11月 タイ バンコクで開催された【第6回 国際身体活動公衆衛生会議】では、身体不活動の減少を支援・促進する宣言が承認されました。
宣言には、「NCDsに対する取り組みの緊急性を支持する」などといった身体的事項だけではなく、「身体活動の減少を支援する環境づくりは、医療費の大幅な削減や生産性の向上、交通・観光への投資に対する実効的リターンなどの便益をもたらす」といった社会・経済的な内容も盛り込まれました。
日本でも、平成12年に生活習慣病やその原因となる生活習慣の改善などについての目標を掲げた「健康日本21」、平成25年からは、新たな健康課題や社会背景を踏まえ「健康日本21(第二次)」と、21世紀における国民の健康づくり運動として、身体不活動を解消するために様々な目標を掲げて対策を進めていますが、全体的な目標達成にはまだ遠い状況です。
■「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」
~健康的な世界に向けて1人1人よりアクティブに~
サブタイトルが示す様に、身体不活動の人を段階的に2030年までに15%減らす事を目指しています。「身体活動に関する世界行動計画2018-2030(世界行動計画)」では、以下の4つの戦略目標と、それぞれに対する政策措置が設定されています。
・4つの戦略目標
☆アクティブな社会を創造
定期的な身体活動には、あらゆる年齢層、能力に応じて、多様な効果がある、ということの知識と理解を深め、真価を認めることで、社会全体にパラダイムシフトを起こす。
☆アクティブな環境を創造
あらゆる年齢層のすべての人々が、能力に応じて、市街やコミュニティで、定期的な身体活動を行うための安全な場所や空間へ平等にアクセスできる権利の保有が推進し、守られる環境を創造・維持する。
☆アクティブな人々を育む
あらゆる年齢や能力を持つ人々が、個人で、家庭で、コミュニティで、定期的な身体活動に取り組むことを支援するため、多様な状況で、機会とプログラムへのアクセスを創出・促進する。
☆アクティブな仕組みを創造
資源をうまく活用して実現していくために、分野をまたいでリーダーシップ、ガバナンス、多様な分野間のパートナーシップ、従事者の能力強化、分野間の支援活動や、情報システムを構築・強化し、身体活動の増加や座位行動の減少に向けて国際間、国内、地域で協調した活動を行う。
参考・引用)身体活動に関する世界行動計画2018-2030(日本語版)暫定版
(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科ほか)
■「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」の実践を支援するツール【ACTIVE】
ACTIVE(身体活動を高めるためのテクニカルガイド)では、身体活動量の目安が示されています。
◆成人・高齢者
高強度の活動を75分、または、中高度の活動を150分/1週間当たり(組み合わせても良い)
◆子供
最低でも60分以上、身体活動を行う/毎日
◆運動機能の低下した高齢者
バランスを高めて転倒を予防するため、身体活動を週3日以上
◆すべての人
主要な筋肉群を使用した筋肉強化運動を週2日以上
少しから初めて、徐々に増やしましょう。
参考・引用)身体活動を高めるためのテクニカルガイド(暫定版)
(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科ほか)
このように、「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」と「ACTIVE:身体活動を高めるためのテクニカルガイド」は、これまでの“健康の為に運動しましょう”という市民に呼びかけるだけの指針とは異なり、地域社会や環境、自治体や国の政策等、インフラ、情報システムなど、多岐にわたった対策が必要だと呼びかけています。
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