【MFA健康コラムVol.15】「多目的コホート研究」による、認知機能・認知症に関する報告書
「多目的コホート研究」による、認知機能・認知症に関する報告書
◆多目的コホート研究(JPHC Study)とは
1990年に始まった大規模で長期にわたる観察型の疫学研究です。
国立がん研究センター予防研究グループが研究事務局を担当し、医師・大学教員をはじめとする予防医学など、
知識ある研究者が、解析にあたり、生活習慣など、死亡や疾病羅患者・健康寿命の延伸との関連を明らかにするための研究がおこなわれています。
・コホートとは、追跡を行っていく特定集団を意味します。
・日本人の死亡の原因になっているがん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病など、病気の発生には、食習慣・運動・喫煙・飲酒など、生活習慣が深くかかわっていると言われています。
これらは、生活習慣の改善によって、ある程度未然に防ぐことが可能と考えられています。
しかし、どのような食生活(どのような食事をどの程度とればよいのか)適度な飲酒(どの程度が適量か)などについてのデータが十分とは言えないため、約10万人の地域住民の方から生活習慣や健康に関する情報、
採血による血液の提供を頂き、どのような生活習慣を持つ人がこれらの病気になりやすいのか、
なりにくいのかを明らかにするために、多目的コホート研究が立ち上げられました。
>>多目的コホート研究の成果パンフレット2016年12月 (6.4Mbyte)
上記の研究から、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究が行われており、様々な研究成果が随時ホームページにアップされています。
今回は、その中の「認知機能・認知症」に関連した、国立がん研究センターが発表している成果報告をご紹介いたします。
【血中HDLと軽度認知障害・認知症との関連】
(Translational Psychiatry 2019年1月にて論文発表)
平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管轄内の南佐久郡8町村にお住まいだった40~59歳、約12,000人のうち、1995-96年の健診データがあり、平成26-27年に行われた「こころの健診」に参加した1,114人のデータに基づき、HDLコレステロールとその後の軽度認知障害・認知症との関連を調べた結果を論文発表しています。
海外の研究では、HDLコレステロールが高いと軽度認知障害(正常と認知症の中間)や認知症のリスクが低下するという事が報告されていますが、いずれも高齢期の測定データを用いた研究が多いため、より早期の中年期のHDLコレステロールが、その後、高齢期の認知機能に影響を与えるかの調査が行われました。この診断は、記憶やその他の認知機能に関する4つの検査と医師による判定によって行われています。
●HDLコレステロールは、軽度認知障害・認知症のリスク低下に関連
・こころの検診において、1,114人のうち、386人が軽度認知障害、53人が認知症と診断されました。
>>調査に関する報告はこちらをご覧ください。
URL:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8235.html
【がん・糖尿病への罹患と軽度認知障害・認知症との関連】
(Psychiatry and Clinical Neuroscience 2019年6月ウェブ先行公開)
平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村にお住まいでアンケートに回答した40~59歳の約12,000人のうち、平成26-27年(2014-15年)に行った「こころの検診」に参加した方の中で、「こころの検診」までに脳卒中に罹患した方を除いた1,244人のデータにもとづいて、中年期のがんおよび糖尿病への罹患と軽度認知障害・認知症との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しています。
糖尿病は認知症と、がんの危険因子として知られていますが、がんが認知症の危険因子かどうかの研究結果は研究間で一致していません。
中年期におけるがんと、糖尿病への罹患が、その後、認知機能に与える影響について調査が行われました。
この診断は、記憶やその他の認知機能に関する4つの検査と医師による判定によって行われています。
●がんと糖尿病の合併は、軽度認知障害・認知症のリスク上昇に関連
・こころの検診において、1,244人のうち、421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断されました。
>>調査に関する報告はこちらをご覧ください。
URL:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8259.html
【女性関連要因と認知機能障害との関連について】
(Maturitas、2019年10月公開)
平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村(1990年時点)にお住まいで
アンケートに回答した40~59歳の約12,000人のうち、2014年~2015年に行った「こころの検診」に参加した女性747人のなかで、「うつ」と診断された人などを除外した670人のデータにもとづいて、女性関連要因と認知機能障害(軽度認知障害と認知症)との関連を調べた結果を専門誌で論文発表。
研究開始時のアンケート調査から、初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経の種類と年齢、初潮から閉経までの期間と、その後の認知機能障害との関連が調査されました。
● 初潮から閉経までの期間が長いと、認知機能障害のリスクが低くなる。
初潮から閉経までの期間が長いほど認知機能障害のリスクは低くなり、38年以上の女性は33年以下と比べて38%低いという結果になりました。
>>調査に関する報告はこちらをご覧ください。
URL:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8394.html
このように、多目的コホート研究では、長期にわたり様々な研究が行われ、その報告が随時HPへアップされていますが、今後も研究結果の蓄積が必要です。
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